その後も、私達は旬のイチゴを使ったデザートをテーブルいっぱいに並べ食べ続けた。

「桃ちゃんが副社長秘書になればいいのに」
その方がきっとうまくいくと思う。

「ダメですよ、私あの顔好きじゃないので」
「はあ?」
あんまりびっくりして、口からポロンとイチゴがこぼれた。

「ごめんなさい。でも、桃ちゃんって面白いわね」
「そうですか?」

一条プリンスホテルの秘書課に所属するのは二〇人ほどの女性。
その半分は専属秘書として重役たちの側で勤務する。
残りの半分は秘書室で、それぞれの業務を行う。
どちらかというと専属秘書が現場で、桃ちゃんたちが裏方のように見えるけれど、実際サポートする側には高い専門知識が求められる。何しろ現場で対応できないときにヘルプを頼むのだから。
桃ちゃんだって、若いけれど仕事のできる秘書に違いない。

「まあ、あの言動は慣れないとキツイだろうと思いますが、頑張ってください。望愛さんが辞めたら今度は秘書課から誰か出すって、課長に脅されているので」

はあ、そういうことか。
きっと秘書課の中で一番年下の桃ちゃんは、自分にお鉢が回ってこないようにと必至なのね。

「どこまでできるかわからないけれど、努力してみるわ」
「お願いします」

桃ちゃんって面白い子だな。
この時の私はそんな風に感じていた。