暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

ブブブ。
その日の午後、執務室の内線が鳴った。

「はい、坂本です」
「コーヒーを頼む」
「はい」

時刻は午後三時。
いつもなら言われなくてもコーヒー淹れている時間。
でも今日は淹れなかったから、電話がかかって来た。


「怒っているのか?」
コーヒーを手に、私を見る副社長の何か言いたそうな顔。

「いいえ」
とは言ったものの、気分が良いわけではない。

「その割に眉間にしわが寄っているぞ」
「え?」
思わず額に手を当てる。

「嘘だよ」
「はあ?」
「それでも、怒った顔をしているのは確かだ」
「・・・すみません」
それはきっと秘書してはいけないことなのだろうと、謝った。

必要のないことは聞き流し、自分の感情を表に出さないこと。
あくまでも秘書はサポート役で自分の意見を言うべきではないと、ここの勤務が決まってから本を買いあさって勉強した。
もちろん付け焼刃でできる仕事でないのはわかっているけれど、少しでも役に立ちたいと自分なりに頑張っているつもりだ。
でも、今日のことは我慢できなかった。

「まあ見ていろ。数日中には連絡が来るはずだ」
「連絡ですか?」
「ああ」

それ以上、副社長は何も教えてはくれなかった。