暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

デザートのケーキとコーヒーが並べられた個室で待つこと二十分。
さすがに誰も口を開くことなく、沈黙の時間が過ぎていった。

ガチャッ。
「待たせたな」
入って来た創介は少しだけ緊張した表情。

「綾香さんは?」
やはりそのことが気になって、真っ先に聞いてしまった。

「きちんと話をして、着替えも用意した。白鳥頭取の迎えで先ほど帰って行ったから、もう大丈夫だ」
「そう」
良かった。

「ところで、君たちはちゃんと反省しているのかな?」
ギロリと、創介が私たちを睨む。

え?
思わず声に出そうになって飲み込んだ。

「だって悪いのはあの女でしょ?勝手に喧嘩売って来たんだから」
「そうよ、望愛がいじめられただけじゃないの」
桃ちゃんも美愛も自分たちは悪くないと主著する。

「だからと言って、挑発したり飲み物をかける必要はないだろう」
「「それは・・・」」

「美愛ちゃん、僕や望愛のために怒ってくれるのはうれしいけれど、自分の体のことを考えないとダメだ。何かあればみんなが悲しむんだからね」
「・・・はい」

「桃も、いくら腹が立ったって人に何かを投げかけるっていうのはある種の暴力だ。手を出したのと一緒だから、その瞬間にこちらが加害者になってしまう。そこのところを冷静に考えなさい」
「はい・・・ごめんなさい」

こうやって兄の顔をする創介を見るのは初めてかもしれない。
なんとなく不思議な思いで、私は三人のやり取りを見ていた。