暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

「創介」
私はいきなり現れた人の名前を呼んだ。

「何をやっているんだ」
呆れたよう私を睨む視線に怒りを含んでいる。

「どうしてここに?」
まずそれが不思議だった。
今日は桃ちゃんと美愛と一緒に出かけるとは伝えてあったが、どこの店に行くとは言っていなかった。
たまたま偶然居合わせたにしては出来すぎている。

「美愛ちゃんの体調のこともあって気がかりだったからこっそりボディガードをついていたんだ。黙っていてすまない」

フーン、なるほど。そういうことか。
正直いい気分ではないけれど、創介の心配もわからなくなはい。

「あの、失礼ですが・・・」
それまで状況を見守っていた支配人が創介さんに尋ねる。

「ああ、私はこういうものです」

「え、ええ」
創介の名刺を受け取った支配人が名前を確認してから数歩後ずさりした。

「妻と妹たちが店内で騒ぎを起こして申し訳ない」
「いえ、一条家の奥様とは知らずこちらこそ失礼しました」

どうやらここは一条コンツェルンの傘下のお店だったようで、支配人は何度も頭を下げてくれる。

「迷惑をかけてすまないが、個室を二つ用意してもらいたい。一つには妻と妹たちを頼む。もう一つの部屋で私がこの女性を話をするから」
「承知いたしました」
「それと、ご迷惑をおかけしたお詫びに、今いらしているお客様に飲み物のサービスをお願いします。もちろん支払いは私の方へ」
「かしこまりました」

創介の対応はとってもスマートで、五分と経たないうちに私達も綾香さんもそれぞれの個室へと連れて行かれた。