暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

「よろしければどこかに場所を」
現れた支配人らしき人が提案するけれど、
「いいえ。望愛さんが両手をついて謝ってくださるまで、私はここを動きません」
自分の方に分があると思っている綾香さんはどこまでも強気だ。

「何を言っているの、喧嘩を売って来たのはあなたの方でしょ?」
美愛も負けずに応戦するが、綾香さんは気にする様子もない。

「これは一条家の嫌がらせです。このまま謝罪がなければ、私も黙っていませんわ」
きっとネット上にあることないこと風潮するって意味だろう。
さあ、どうしたものか・・・

桃ちゃんは綾香さんの言葉にショックを受けて黙ってしまった。
美愛は怒り心頭の様子で唇をわなわなと震わせている。
困惑した様子のスタッフと、興味津々でこちらを見ているお客さんたち。
そんな中、綾香さんは泣いたふりをしながら私の出方を待っている。

はぁ。
私は小さく息を吐いた。

こうなったら私が綾香さんに謝罪するしかない。
そうしなければ、創介に迷惑が掛かってしまう。

私はゆっくりと席を離れ、綾香さんの前に立った。
悔しい気持ちがない訳ではない。
それでも、一条家の名前を汚すことはできない。
その思いで、ゆっくりと膝をつこうとした時、

「待て」
後ろから腕をつかまれた。