暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~

桃ちゃんが案内してくれたのは、高層商業ビルの最上階。眼下に東京のパノラマを眺めながら、窓沿いに設置されたカウンター席でお酒と料理をいただくことのできるお店。

「ここはバーだけど食事もおいしいのよ」
「へー、素敵なお店ね」

さすがに桃ちゃんはおしゃれで美味しいお店をよく知っている。

「いらっしゃいませ」
お店の中に入ると男性スタッフが出てきた。

「予約していた高井です」
「お待ちしておりました」

どうやら桃ちゃんが事前に連絡をしていたようで、案内されたのは窓際の眺めのいい席。
私達は窓に面したテーブルを囲うように席に着いた。

「お料理はシェフのお勧めで、三人ともお酒は飲みませんのでノンアルコールのカクテルをお願いします」
「かしこまりました」

お料理も飲み物の桃ちゃんに任せ、私も美愛も夕闇が迫る東京の絶景に目を奪われた。
創介と付き合うようになって素敵なお店にもたくさん連れて行ってもらったし、東京の夜景も随分見た気がするけれど、やはり美しいものは美しい。
そしてこの景色を美愛を共に見ていられることがとてもうれしい。

「そう言えば、今朝兄からメールがあって『あんまり遅くなるな。美愛さんにも無理をさせるんじゃないぞ』って言ってきたのよ。まるで私が引っ張りまわしているみたいなこと言って、失礼よねえ」
「そうね、創介さんってちょっと過保護なのよね」

絶景に見とれている私の横で、美愛と桃ちゃんが創介さんの文句を言っている。
私はその光景をニコニコしながら見ていた。
その時、

「あら坂本さん、久しぶりね」
突然かけられた声に、固まった。