私はきっと聞いてはいけない会話を聞いたのだと思った。
打ち解けた二人の遠慮のないやり取り。
それは上司と部下のものではないし、友人関係にも聞こえない。
きっと二人の間には何かある。私は直感的にそう感じた。

「具体的な業務分担については隼人と詰めてくれ」
「わかったわ」
「できるだけ早めに頼むぞ」
「はいはい」

創介さんにこんな軽口をたたく人がいるのね。
そのことにびっくり。

「それから、しばらくの間圭史とは連絡をとるんじゃない」
「えー、なんで?」
「何でもいいから、しばらくかかわるな」

圭史さんの名前が出て、心臓がドキンと鳴った。

「もしかして喧嘩をしたの?」
「バカ、そんなんじゃない」
「どうかしたの?」

低く沈んだ印象の創介さんの声に、桃ちゃんも何かあるんだと感じたようだ。

「どうもしない。ただ、しばらく連絡を控えてほしい」
「わかりました」

創介さんが三十歳で桃ちゃんが二十四歳だから、その差は六歳。
少し年齢差はあるけれど、お似合いの二人かもしれない。
この時の私は、勝手に自分の中で妄想を膨らませていた。