「はあぁー」
柄にもなく、大きなため息が出た。

今一番の心配事は望愛のこと。
女性スタッフを呼んで体を拭いて着替えさせたから、寝息も幾分穏やかになった気がするが、すぐに無理をする奴だから油断はできない。
目を光らせておかないと何をするわかったものじゃない。

そして、もう一つは綾香さんのこと。
いくら俺の言動がはっきりしないからと言って、今回のことは暴走が過ぎる。
さすがにこのままでは一条家も黙っていませんよと父親である白鳥頭取を脅しておいたから騒ぎはすぐに治まるだろうが、今回の騒動で一条プリンスホテルの株価は下落気味だ。
まあこれだけ書かれればしかたがないとは思うが、挽回には時間がかかるのかもしれない。

ピコン。
メッセージの受信。
送り主は、じいさんだった。

『明日の朝、家に寄りなさい』

それはじいさんからの呼び出し。
さすがにここまで騒がれれば、じいさんの耳にも入ってしまったらしい。

「仕方ない、叱られてくるか」

そう言いながら、笑顔でいられる自分に俺自身が驚いている。
どうやら今の俺は相当浮かれているらしい。