新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

お待ちしております? 気をつけていらして下さい?
まだ、誰か来るんだろうか?
でも、そう言えば……。
『お連れ様のお一人は、もうお見えになっていらっしゃいます』 と、店員さんが言ってた。と、いうことは、もう1人来る予定ってこと?
いったい、誰が……来るの?
「今、こっちに向かってる途中で、後、15分ぐらいで着くそうだから」
「そう」
折原さんに言われて、高橋さんもすんなり返事をしているということは、高橋さんももう1人誰か来ることを知ってるんだ。
「矢島ちゃん。あのね、もう1人来ることになってるんだけれど、ちょっと仕事で遅れてるみたいなの。もう少ししたら来るから、それまで待っててくれる? ごめんね、お腹空いてるでしょう?」
「あっ、いえ、大丈夫です。あの……。どなたが、お見えになるんですか?」
気になったので、折原さんに思い切って聞いてみた。
「私の大学の先輩で、凄く素敵な人。ずっと私、今でも憧れてるのよ。本当に、全てが格好いいの」
折原さんの言い方は、恋人のことを語るような口ぶりで、折原さんがまるで少女に戻ってしまったかのように見えた。
「そ、そんなに、格好いいんですか?」
高橋さんよりも、格好いいのかなあ……。
ハッ!
私ったら、何を比べようとしているんだろう。いけない、いけない。
「矢島ちゃん。何、風見鶏みたいに首振ってるの?」
か、風見鶏?
「い、いえ、何でもありません……」
半分、妄想の世界から呼び戻されたみたいで、恥ずかしくて下を向いた。
「で? 労災の申請は、通りそうなの?」
エッ……。
「大丈夫だろ? 人事部長と総務部長に、少しだけお話させて頂いたから」
人事部長と総務部長に、少しだけお話?
「へえー。高橋の脅しは、少しだけお話させて頂くっていうの?」
折原さん?
お、脅しって……。
「折原。お前は、どうしてそう飛躍するんだ? 経緯を話しただけだぞ」
「分かってるって。だけど、何のための労働保険なのか、分からないわよね」
「そうだな」
「何か、まるでこっちが悪いみたいな扱いされる人も、なきにしもあらずよね」
労災扱いって、そんなに厄介なことなの?
「矢島ちゃんは、堂々としていていいんだからね。何も、悪いことはしていないんだから」
「はあ……」
そうは言っても、何となく肩身が狭い。病院に立ち寄りで行ったりすることも、何だか気が引ける。
「それで、改善策はどうなるの?」
改善策?