「聞いてる?」
「は、はい……。送って下さって、ありがとうございました。おやすみなさい」
昨日と同じように高橋さんを振り返ることなく、マンションの中へと入ってしまったが、それでもやっぱり気になって、そっと上から覗いてみたが、もう高橋さんの車はすでになかった。
私は、いったい何を期待していたんだろう?
きっと、人事に異動するんだ。
高橋さんは、何で私をそんなに急いで異動させなければならないんだろう? さっきも 高橋さんは、心配するな、大丈夫、安心しろとしか言ってくれなかった。
ひょっとして……。
宮内さんのことと、何か関係しているの? あれから何も話してくれないけれど、私から聞くのも何となく聞きづらかった。宮内さんのことが絡んでいたとしたら……。
その夜、寂しさと不安が交錯して、心が軋んで悲鳴を上げながらベッドの中で、その思いを断ち切ろうと必死に声も出さずに泣いていた。
翌朝、立ち寄りで明良さんの病院へ行き、明良さんの外来の日ではないので、受付で明良さんを呼んでもらって待合室で待っていると、少しして明良さんが目の前に現れた。
「おはよう」
エッ……。
目の前に立っている明良さんに、思いっきり顔を覗かれていた。
「あっ、おはようございます。すみません、気づかなくて……」
診断書をもらってきてと、言われたこと。
今日の午後、人事の面接があること。
そんな昨日、高橋さんに言われたことを思い出していて、ついボーッとしてしまっていたらしく、目の前に明良さん立って顔を覗かれるまで気づかなかった。
明良さんが、案内してくれた診察室に入る。
「陽子ちゃん。どったのぉ? 何だか、深刻な顔してるけど?」
何て応えていいのか、分からない。
「じゃあ、取り敢えず足診せて」
「はい」
明良さんは、それ以上は聞かずに診察を始めてくれた。
「うん。殆ど、もう腫れは引いたね。この分でいけば、来週中には湿布もしなくて済むかもしれない」
「そうですか、ありがとうございます」
明良さんは、湿布薬を患部に貼りながらチラッと私を見た。
「なーんか、あまり嬉しそうじゃないね?」
「えっ? そ、そんなことないですよ。あ、あの……高橋さんが、診断書をもらってくるようにって、言われたんですが……。明良さんに言えば、分かるからって」
明良さんに話ながら、昨夜のことを思い出していた。
「あっ、そう。分かった。へえぇ……。やっと動いたんだ、貴博。さては、あいつ……」
エッ・・・・・・
明良さん。何か、知ってるの?
「明良さん。私……」
「ん? ごめん。ちょっと、待って」
包帯を巻き終わった明良さんは、机に向かって診断書を書いてくれていた。
「ヨシッ! 出来たっとぉ。で……何だっけ?」
明良さんは、会計ファイルに今書いてくれた診断書を挟み込むと、椅子を回転させて私の方へ向き直った。
「いえ……。何でもないです」
「は、はい……。送って下さって、ありがとうございました。おやすみなさい」
昨日と同じように高橋さんを振り返ることなく、マンションの中へと入ってしまったが、それでもやっぱり気になって、そっと上から覗いてみたが、もう高橋さんの車はすでになかった。
私は、いったい何を期待していたんだろう?
きっと、人事に異動するんだ。
高橋さんは、何で私をそんなに急いで異動させなければならないんだろう? さっきも 高橋さんは、心配するな、大丈夫、安心しろとしか言ってくれなかった。
ひょっとして……。
宮内さんのことと、何か関係しているの? あれから何も話してくれないけれど、私から聞くのも何となく聞きづらかった。宮内さんのことが絡んでいたとしたら……。
その夜、寂しさと不安が交錯して、心が軋んで悲鳴を上げながらベッドの中で、その思いを断ち切ろうと必死に声も出さずに泣いていた。
翌朝、立ち寄りで明良さんの病院へ行き、明良さんの外来の日ではないので、受付で明良さんを呼んでもらって待合室で待っていると、少しして明良さんが目の前に現れた。
「おはよう」
エッ……。
目の前に立っている明良さんに、思いっきり顔を覗かれていた。
「あっ、おはようございます。すみません、気づかなくて……」
診断書をもらってきてと、言われたこと。
今日の午後、人事の面接があること。
そんな昨日、高橋さんに言われたことを思い出していて、ついボーッとしてしまっていたらしく、目の前に明良さん立って顔を覗かれるまで気づかなかった。
明良さんが、案内してくれた診察室に入る。
「陽子ちゃん。どったのぉ? 何だか、深刻な顔してるけど?」
何て応えていいのか、分からない。
「じゃあ、取り敢えず足診せて」
「はい」
明良さんは、それ以上は聞かずに診察を始めてくれた。
「うん。殆ど、もう腫れは引いたね。この分でいけば、来週中には湿布もしなくて済むかもしれない」
「そうですか、ありがとうございます」
明良さんは、湿布薬を患部に貼りながらチラッと私を見た。
「なーんか、あまり嬉しそうじゃないね?」
「えっ? そ、そんなことないですよ。あ、あの……高橋さんが、診断書をもらってくるようにって、言われたんですが……。明良さんに言えば、分かるからって」
明良さんに話ながら、昨夜のことを思い出していた。
「あっ、そう。分かった。へえぇ……。やっと動いたんだ、貴博。さては、あいつ……」
エッ・・・・・・
明良さん。何か、知ってるの?
「明良さん。私……」
「ん? ごめん。ちょっと、待って」
包帯を巻き終わった明良さんは、机に向かって診断書を書いてくれていた。
「ヨシッ! 出来たっとぉ。で……何だっけ?」
明良さんは、会計ファイルに今書いてくれた診断書を挟み込むと、椅子を回転させて私の方へ向き直った。
「いえ……。何でもないです」

