「じゃあ、俺、鍵返して帰りますから。お疲れ様でした」
「よろしくな。お疲れ」
「お疲れ様でした」
中原さんと別れ、昨日と同じように高橋さんの車に乗って家路につく。
この空間から早く脱したいという思いばかりが、気持ちの大半を占めている。
「そうだ」
急に高橋さんが言葉を発したので、驚いて運転席の方を見た。
「明日、病院だろ?」
「あっ、はい」
明日は金曜日で、明良さんの病院に行く日でもあった。
「明良に言って、診断書を書いてもらって来てくれるか?」
「診断書……ですか?」
何だろう?
もしかして、それって今度の異動の時に使うとか?
「そうだ。明良にそう言えば、分かるから」
明良さんにそう言えばって……。
「あの……診断書って、何に使うんですか?」
思い切って聞いてみた時には、もうマンションの前に着いてしまっていた。
高橋さんが車を停め、サイドブレーキを踏み込んだ。
「それと、明日の14時半から、人事でちょっとした面接がある。その時に、その診断書を持って行ってくれるか?」
エッ……。
面接?
「面接って、何ですか? 何のために、そんなことするんですか? 高橋さん。ちゃんと説明して下さい」
どういうこと?
面接って、何?
異動の時期は、新入社員が4月に入ってきて、その時も若干の異動はあるが、基本的には6月。あとは、異例で毎月何名かの異動はあるが、いずれにしても内示は月末で、実施は月初となっている。異例の異動は、具合が悪かったり、怪我等をして今居る部署が無理だと判断された時には、行われることも稀にある。
私は、その異例の異動なんだろうか?
その為に、診断書がいるの? だけど……今日は、もう10月1日になっている。
よく分からない。
「大丈夫だ。何も、心配することはない。お前は、聞かれたことを正直に応えればいいだけだ。俺も、一緒に行く」
大丈夫って……。何が、大丈夫なの?
「何で……。何が、大丈夫なんですか? 高橋さんは、そんなに私を人事に帰したいんですか?」
人事的なことは言えないと昨日言われたけれど、あまりの急な話に、高橋さんに問いたださずにはいられない。
「大丈夫だから、落ち着けって」
高橋さんは、私の右肩を左手で掴み、落ち着くように優しくさすった。
「私……。高橋さんが、何を考えていらっしゃるのか分かりません」
心の奥が擦り切れてしまいそうに、悲鳴をあげている。
高橋さんに触れられた右肩をそっと引っ込め、高橋さんの左手から離れた。
その一部始終を高橋さんは目で追いながら、フロントガラスの方へと視線を移すと、真っ直ぐ前を見た。
「安心しろ。悪いようにはしないから」
高橋さんが集中ドアロックを解除すると、運転席から降りて助手席のドアを開けてくれたが、言葉が何も浮かばず無言のまま助手席から降りた。
「じゃあ、明日。診断書の件、頼むな」
返事をするべきか、否か、迷ってしまう。
「よろしくな。お疲れ」
「お疲れ様でした」
中原さんと別れ、昨日と同じように高橋さんの車に乗って家路につく。
この空間から早く脱したいという思いばかりが、気持ちの大半を占めている。
「そうだ」
急に高橋さんが言葉を発したので、驚いて運転席の方を見た。
「明日、病院だろ?」
「あっ、はい」
明日は金曜日で、明良さんの病院に行く日でもあった。
「明良に言って、診断書を書いてもらって来てくれるか?」
「診断書……ですか?」
何だろう?
もしかして、それって今度の異動の時に使うとか?
「そうだ。明良にそう言えば、分かるから」
明良さんにそう言えばって……。
「あの……診断書って、何に使うんですか?」
思い切って聞いてみた時には、もうマンションの前に着いてしまっていた。
高橋さんが車を停め、サイドブレーキを踏み込んだ。
「それと、明日の14時半から、人事でちょっとした面接がある。その時に、その診断書を持って行ってくれるか?」
エッ……。
面接?
「面接って、何ですか? 何のために、そんなことするんですか? 高橋さん。ちゃんと説明して下さい」
どういうこと?
面接って、何?
異動の時期は、新入社員が4月に入ってきて、その時も若干の異動はあるが、基本的には6月。あとは、異例で毎月何名かの異動はあるが、いずれにしても内示は月末で、実施は月初となっている。異例の異動は、具合が悪かったり、怪我等をして今居る部署が無理だと判断された時には、行われることも稀にある。
私は、その異例の異動なんだろうか?
その為に、診断書がいるの? だけど……今日は、もう10月1日になっている。
よく分からない。
「大丈夫だ。何も、心配することはない。お前は、聞かれたことを正直に応えればいいだけだ。俺も、一緒に行く」
大丈夫って……。何が、大丈夫なの?
「何で……。何が、大丈夫なんですか? 高橋さんは、そんなに私を人事に帰したいんですか?」
人事的なことは言えないと昨日言われたけれど、あまりの急な話に、高橋さんに問いたださずにはいられない。
「大丈夫だから、落ち着けって」
高橋さんは、私の右肩を左手で掴み、落ち着くように優しくさすった。
「私……。高橋さんが、何を考えていらっしゃるのか分かりません」
心の奥が擦り切れてしまいそうに、悲鳴をあげている。
高橋さんに触れられた右肩をそっと引っ込め、高橋さんの左手から離れた。
その一部始終を高橋さんは目で追いながら、フロントガラスの方へと視線を移すと、真っ直ぐ前を見た。
「安心しろ。悪いようにはしないから」
高橋さんが集中ドアロックを解除すると、運転席から降りて助手席のドアを開けてくれたが、言葉が何も浮かばず無言のまま助手席から降りた。
「じゃあ、明日。診断書の件、頼むな」
返事をするべきか、否か、迷ってしまう。

