「お電話代わりました。矢島です」
「宮内ですけど、電話くれた?」
「は、はい。あの……」
「あっ、例の件ね」
そう言った途端、宮内さんは小声になった。
「そ、そうなんですが、土曜日なんですけれど……」
そんな私も受話器を持ちながら口のところに手を当てて、下を向きながら小声で話した。
「15時に、駅ビルの3階の一番奥にありますカフェでお会いする約束しましたので、よろしくお願いします」
「分かったわ。やればできるじゃない」
やればできるって、そんな……。
「15時に、駅ビルの3階のカフェね。ありがとう。それじゃ」
「あ、あの……」
高橋さんの家に泊まったことは、これから先も誰にも言わないで欲しいと言おうと思ったのに、電話を切られてしまった。
何だか、嫌な気分だな。
「どうかした?」
エッ……。
「な、中原さん。お帰りなさい」
宮内さんと電話で話していたので、中原さんが戻ってきたことに全く気づかなかった。
「気づかなくて、ごめんなさい」
「いや、矢島さん。電話中だったから」
まさか?
中原さんに、宮内さんとの会話を聞かれてしまった?
でも、15時に渋谷の駅ビルの3階のカフェだけでは、何もわからないかもしれない。高橋さんの名前は、出さなかったから。
冷静になって考えてみると、中原さんには気づかれていない気がした。
「すみません」
「何かあった?」
「えっ?」
「問い合わせとか、分からない電話とかなかった?」
ああ、驚いた。仕事のことに決まってるのに、何を私ったら勘違いしてるんだろう。
「あっ。大丈夫でした。今、高橋さんも、会議に行かれたので」
「そう。それなら良かった」
「はい。ありがとうございます」
気を取り直して書類に目を通し始めたが、先ほどの高橋さんの後ろ姿が目に焼き付いていて、心が落ち着かない。
本当に、私は取り返しの付かないことをしてしまったのかもしれない。そう思ったら、どうしても気になって仕方がなかったが、直ぐにもう1人に自分が出て来てそれを否定する。宮内さんに、高橋さんのマンションに泊まったことをばらされてしまったら、やっぱり高橋さんに迷惑がかかってしまうから困る。
そんな浮き沈みの激しい思いのまま、高橋さんにやっぱり話そう。でも、やっぱり話せない。その自問自答を繰り返して悶々と過ごしながら、とうとう金曜日になってしまっていた。
「切りのいいところで、今週は終わりにしよう。中原と矢島さん。来週は、正念場だから頼むな」
「はい」
「宮内ですけど、電話くれた?」
「は、はい。あの……」
「あっ、例の件ね」
そう言った途端、宮内さんは小声になった。
「そ、そうなんですが、土曜日なんですけれど……」
そんな私も受話器を持ちながら口のところに手を当てて、下を向きながら小声で話した。
「15時に、駅ビルの3階の一番奥にありますカフェでお会いする約束しましたので、よろしくお願いします」
「分かったわ。やればできるじゃない」
やればできるって、そんな……。
「15時に、駅ビルの3階のカフェね。ありがとう。それじゃ」
「あ、あの……」
高橋さんの家に泊まったことは、これから先も誰にも言わないで欲しいと言おうと思ったのに、電話を切られてしまった。
何だか、嫌な気分だな。
「どうかした?」
エッ……。
「な、中原さん。お帰りなさい」
宮内さんと電話で話していたので、中原さんが戻ってきたことに全く気づかなかった。
「気づかなくて、ごめんなさい」
「いや、矢島さん。電話中だったから」
まさか?
中原さんに、宮内さんとの会話を聞かれてしまった?
でも、15時に渋谷の駅ビルの3階のカフェだけでは、何もわからないかもしれない。高橋さんの名前は、出さなかったから。
冷静になって考えてみると、中原さんには気づかれていない気がした。
「すみません」
「何かあった?」
「えっ?」
「問い合わせとか、分からない電話とかなかった?」
ああ、驚いた。仕事のことに決まってるのに、何を私ったら勘違いしてるんだろう。
「あっ。大丈夫でした。今、高橋さんも、会議に行かれたので」
「そう。それなら良かった」
「はい。ありがとうございます」
気を取り直して書類に目を通し始めたが、先ほどの高橋さんの後ろ姿が目に焼き付いていて、心が落ち着かない。
本当に、私は取り返しの付かないことをしてしまったのかもしれない。そう思ったら、どうしても気になって仕方がなかったが、直ぐにもう1人に自分が出て来てそれを否定する。宮内さんに、高橋さんのマンションに泊まったことをばらされてしまったら、やっぱり高橋さんに迷惑がかかってしまうから困る。
そんな浮き沈みの激しい思いのまま、高橋さんにやっぱり話そう。でも、やっぱり話せない。その自問自答を繰り返して悶々と過ごしながら、とうとう金曜日になってしまっていた。
「切りのいいところで、今週は終わりにしよう。中原と矢島さん。来週は、正念場だから頼むな」
「はい」

