新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

嘘。
いきなりお腹が鳴ってしまい、あまりの大きな音に高橋さんにも聞こえてしまっていた。
「ハハハッ……。お前、お腹空いてるんだな」
「あっ。あ、あの……嫌だ。ごめんなさい。その……晩ご飯まだ食べていなくて、アハハッ……」
もう、笑って誤魔化すしかなかった。
「フッ……。やっと笑ったな」
エッ……。
はにかんだように笑った高橋さんが私を引き寄せると、いきなり左手で私の顎を持った。
「俺が取り戻したい人生の忘れ物。それは、忘れてしまった恋愛」
そう言うと、仄かに高橋さんの香りがした途端、高橋さんの唇が私の唇と重なっていた。
深いキス。
ミサさんと間違えてされたキスとは、全く違う深いキス。
一筋の涙が流れると、高橋さんがその涙を指先で拭ってくれている。
駄目……。
体がフワッと宙に浮くように、全身の力が抜けてしまいそう。
「だから言っただろう? 泣いてばかりいたら、サンタクロースにプレゼントはペンディングされるぞって」
黙って高橋さんを見上げながら頷くと、高橋さんが悪戯っぽく笑いながら言った。
「Merry Christmas My Baby」


「新そよ風に乗って 〜幻影〜 」 完

and……
next volume to be continued……