新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

「高橋さんと、何かあった?」
「えっ? な、何もないですよ? どうしてですか?」
「あっ。いや、それならいいんだ」
「はあ……」
何か、中原さん。変だったな。
何もない。本当に、高橋さんとはもう何もない。
明日の金曜日は祝日なので週末は三連休だからと、帰りに食事や飲みに行く人が多いらしく、警備本部の前は、その待ち合わせの社員でごった返していた。
外に出ると、冷たい北風が頬を荒々しく撫でるように吹いていて、一気に体温を奪って行かれた感じがして駅までの道を急ぐ。
最寄り駅に着いてからも、いつもより早足で家路を急いでいると、周りのクリスマスのイルミネーションが風に揺られて、パッと見た感じ、光の線を描いているように見えた。
もうすぐ、クリスマス……。
明後日は、クリスマス・イヴだ。
高橋さんは、誰と過ごすのかな?
あっ。また、余計なこと考えちゃった。
ひんやりとした、冬独特の匂いを感じながら冬空を見上げると、こんなところでも星が3つ、4つ綺麗に見えていた。
アドベンチャー・ワールド……。
楽しかったな。手を伸ばせば届きそうで、直ぐ近くにあるように錯覚してしまうほど星が綺麗だった。
もう、遠い昔の話みたい。
冬空を見上げながら、一瞬、目を瞑って大きく深呼吸をすると、目尻から涙が流れていた。
「そんなに泣いてばかりいたら、サンタクロースにプレゼントはペンディングされるぞ?」
エッ……。
「高橋さん……」
どうして、高橋さんが此処に?
慌てて手袋を外して、涙を拭った。
「こんばんは」