椅子から立ち上がって、急いで高橋さんにお辞儀をすると、持っている力を全て出して走り出していた。高橋さんから早く離れたところで、何も変わらないのに。
そんな風に冷静に何故か自分に言い聞かせていることが、とても不思議に思えたが、走りながら左足の痛みはもう全くないことに気づきながら、この左足を怪我した時も高橋さんが明良さんの病院まで連れて行ってくれて……。
いろんなことが思い出されて余計哀しくなって、ちょうどトイレが見えたので飛び込むようにして入ったが、個室から出て来た時にはだいぶ時間が経っていた。
鏡に映る自分の顔を見て、慌ててメイクを直す。
メイクを直すように、自分の心もスッキリ綺麗にメイク出来たらどんなにいいだろう。
高橋さんが帰ってくるまでには、もっと心も落ち着いて気持ちの整理が出来ているはずだから。
『あんたの手に負えるような男じゃない。手に負える、負えないの問題じゃないけど、あの男はかなり難しいと思う』 『直ぐには、諦めきれないかもしれない。でも、その方が陽子のためだと思うから……』
まゆみの言う通りだった。
高橋さんを諦めるのは、私のため。私のためなんだ……。
しかし、感傷に浸っている暇もないぐらいに月末処理に追われ、何とか切り抜けられたとホッとしたのも束の間、12月の5日締めが直ぐに来て、年末の慌ただしさと共に、あっという間に中旬を過ぎてしまっている。
まるで、それは書類と時間に追われているようで、毎日、家と会社の往復だけで精一杯だった。
「そう言えば、高橋さん。今日帰ってくるんじゃなかったっけ?」
エッ……。
中原さんの言葉に反応してホワイトボードを見ると、高橋さんの欄に22日の所に帰国予定と記されていた。
「そうですね。今日、帰っていらっしゃるんですね」
高橋さん。
本当は、今日22日が来るのをずっと心待ちにしていた。
どんな顔をしていたんだっけ? 等と、昨日の夜はずっと考えたりしていて、また直ぐに我に返って胸を撫でながら気持ちを落ち着かせて……その繰り返しだった。もう、何もないのに。
それでも、上司が帰ってくるのだからと考えると、それはそれでやっぱり嬉しい。
「矢島さん?」
「はい?」
中原さんが席を立ってこちらに来ると、座っている私の隣に立った。
そんな風に冷静に何故か自分に言い聞かせていることが、とても不思議に思えたが、走りながら左足の痛みはもう全くないことに気づきながら、この左足を怪我した時も高橋さんが明良さんの病院まで連れて行ってくれて……。
いろんなことが思い出されて余計哀しくなって、ちょうどトイレが見えたので飛び込むようにして入ったが、個室から出て来た時にはだいぶ時間が経っていた。
鏡に映る自分の顔を見て、慌ててメイクを直す。
メイクを直すように、自分の心もスッキリ綺麗にメイク出来たらどんなにいいだろう。
高橋さんが帰ってくるまでには、もっと心も落ち着いて気持ちの整理が出来ているはずだから。
『あんたの手に負えるような男じゃない。手に負える、負えないの問題じゃないけど、あの男はかなり難しいと思う』 『直ぐには、諦めきれないかもしれない。でも、その方が陽子のためだと思うから……』
まゆみの言う通りだった。
高橋さんを諦めるのは、私のため。私のためなんだ……。
しかし、感傷に浸っている暇もないぐらいに月末処理に追われ、何とか切り抜けられたとホッとしたのも束の間、12月の5日締めが直ぐに来て、年末の慌ただしさと共に、あっという間に中旬を過ぎてしまっている。
まるで、それは書類と時間に追われているようで、毎日、家と会社の往復だけで精一杯だった。
「そう言えば、高橋さん。今日帰ってくるんじゃなかったっけ?」
エッ……。
中原さんの言葉に反応してホワイトボードを見ると、高橋さんの欄に22日の所に帰国予定と記されていた。
「そうですね。今日、帰っていらっしゃるんですね」
高橋さん。
本当は、今日22日が来るのをずっと心待ちにしていた。
どんな顔をしていたんだっけ? 等と、昨日の夜はずっと考えたりしていて、また直ぐに我に返って胸を撫でながら気持ちを落ち着かせて……その繰り返しだった。もう、何もないのに。
それでも、上司が帰ってくるのだからと考えると、それはそれでやっぱり嬉しい。
「矢島さん?」
「はい?」
中原さんが席を立ってこちらに来ると、座っている私の隣に立った。

