新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

この電車だと、15時ギリギリに第一ターミナル駅に着く。駅からダッシュしなくちゃ。だけど空港入港検査があるから、そこが混んでいたら嫌だな。そんな気を揉みながら駅に着いてダッシュで改札口を出ると、思いの外、混んでいなくて直ぐに通れた。
出発ロビーのKカウンターの辺り。Kカウンター……Kカウンター……。
あっ。高橋さん。
Kカウンターの近くに高橋さんの姿を見つけて、嬉しくて駆け寄ろうとしたその時だった。
エッ……。
高橋さんの元に、もう一人駆け寄っていく女性が居た。その人の方が、私より速く高橋さんに近づいていき、それに気づいた高橋さんがゆっくりとその女性の方を見ていた。
「貴博さん」
その女性は高橋さんの前に立つと、高橋さんのことをそう呼ぶ声が微かに聞こえた気がする。
高橋さん……。
高橋さんのことを、 『貴博さん』 と呼んだあの女性はいったい……。
まさか、ミサさん?
どんな会話を交わしているのか、此処からでは聞こえないが、近づいていって立ち聞きなんてしたくなかったので、少し下がって壁際に立ち、高橋さんと女性の話が終わるのを遠くから見ながら待つことにした。
遠くから見る高橋さん横顔は、やはり元モデルだけあって身長の高さと相俟って絵になり、濃紺のコートが一層映える。
それにしても、相手の女性も背が高くて本当に綺麗な人だな。
もし、あの人がミサさん。若しくは高橋さんの彼女と言われても納得してしまいそうなほど凄く輝いていて、とても高橋さんとお似合いに見える。
私は……。
思わず、自分の足下を見た。
いつものローヒールの靴。あの女性が履いているような、高いヒールの靴はとても履けない。それに、あんなに胸元の開いたVネックのセーターを、素肌に纏うなんてことも到底出来ない。
心の何処かで分かっていたことなのに、現実を目の当たりにした気がした。
私には、とても高橋さんの隣に立つことなんて夢のまた夢。並ぶことすら出来なくて、何時も後ろからその大きな背中をそっと見ていられればそれでいい。ただ、それだけで心の安定が図れるのだから。
エッ……。