新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

まゆみには、高橋さんの家にIDカードを届けに行った話はしていた。それと、明良さんが来るまで部屋に居たことも。だけど、アイスバッグの話は恥ずかしくて言えなかった。
「あのね。高橋さんの部屋で、別れた彼女からの手紙を見つけちゃったの」
「手紙? 陽子。読んだの?」
「まさか。とんでもない。人の手紙を読むなんて、絶対しないもの。そうじゃなくて、その手紙……封が切られてなかったの」
「何? それじゃあ、ハイブリッジは、その手紙を読んでないってこと?」
「そうみたいなの。だから……」
「そりゃ、気になるわな。だけどさ、何でハイブリッジは、読まないんだったらその手紙捨てないんだろう? 普通、読まないつもりなんだったら、直ぐに捨てちゃうよ」
やっぱり、そうだよね。
私も、まゆみと同意見だった。だからこそ、ずっとこの前から気になっている。
「ハイブリッジ。まだ、未練があるか……」
まゆみ……。
高橋さんは、ミサさんのことを忘れることはないのかもしれない。ううん。忘れるんじゃなくて、忘れようとは思わないんじゃ……。
「陽子。この前も、陽子はハイブリッジのことは、憧れだとか何だとか言って誤魔化してたけど、これだけ気になってるんだから、やっぱりハイブリッジのことが好きなんだよ」
「まゆみ。私……」
「だけど、敢えて友達だから言わせて貰う。悪いことは言わない。陽子。ハイブリッジは、もう諦めた方がいいよ」
まゆみ。
「あんたの手に負えるような男じゃない。手に負える、負えないの問題じゃないけど、あの男はかなり難しいと思う」
まゆみに、返す言葉が見つからなかった。当たっているだけに、何も言えないと言った方がいいのかもしれない。私は……やっぱり、高橋さんが好きなんだ。
それを今、改めて実感してしまった。たとえ、心の中で思っていようとしても、まゆみにはお見通しだったんだ。
「直ぐには、諦めきれないかもしれない。でも、その方が陽子のためだと思うから。男なんてさあ、星の数ほど居るんだよ? ハイブリッジだけが、男じゃないんだから」
「ありが……とう。まゆみ」
「いい男子が居たら、紹介するからさ」
「う、うん。でも、今はとてもそんな気分になれないから、ごめんね」
「了解。その気になったら、いつでも声掛けて」