「今の体温計は、測定も速い」
そう言いながら高橋さんは、体温計のデジタル表示を見ている。
「あ、あの、何度でしたか?」
「ん?」
あっ。そうだ。
急いでシンク横に置いてあった、体温計のケースを取った。
「高橋さん。何度でしたか?」
「お前。ケースよこせ」
「嫌です。何度あったのか、教えて下さい」
少しだけキッと高橋さんを見たが、何故か高橋さんが額に左拳を当てて大きく溜息を突いた。
「まったく、お前は……」
観念したように、高橋さんが体温計を渡してくれた。
エッ……。
39度6分。
「ちょ、ちょっと、あの……。高橋さん。寝て下さい。い、今、何とかしますから」
「何とかする?」
「そ、そうです。何とかしますから、もうベッドで寝て下さい」
体温計をケースにしまってポケットに入れると、高橋さんの腰の辺りを全力で押してキッチンから追い出した。しかし、高橋さんはキッチンからは出たものの、寝室には向かおうとしないので、また腰を押した。
「高橋さん。お願いですから、寝て下さい」
「わ、分かった。分かったから、くすぐったいから腰触るな」
「えっ?」
慌てて腰から手を離すと、高橋さんが振り返った。
「す、すみません」
「全力出して、それだけか……」
ハッ!
な、何か、馬鹿にされてるような……。
けれど、高橋さんが寝室に入ってくれたので、ベッドに横になるのを確認してから寝室を出て、リビングの隅で壁に向かいながら慌てて明良さんに電話をした。
明良さんは、留守番電話になっていたが、暫くすると電話をくれた。
「39度6分?」
「そうなんです。高橋さん。とても辛そうなんです」
「分かった。それじゃ、陽子ちゃん。俺が行くまで、なるべく貴博の熱がこれ以上上がらないように体冷やしてくれる?」
「は、はい。あの……」
「アイスバッグが洗面所のシンクの下の扉を開けると入ってるから、それを脇の下と股間に置いてやってくれる? 確か、5個置いといたはずなんだ。脇も股間も左右両方と、あと額にも出来たらお願い出来るかな」
明良さん。股間って……。
無理だ。私には、無理。
「もしもし? 陽子ちゃん。聞いてる?」
「あっ。は、はい」
「恥ずかしいとか、そんなこと考えてるんじゃない? でも、人の事だけど具合が悪い人に力を貸すことに羞恥心は必要ないことでしょ? 恥ずかしいと思う気持ちは自身のことであって、その気持ちで人の具合は良くならないんだから力を貸すことにはならないよ」
明良さん……。
「そんなこと言ったら、俺なんて仕事にならないもん」
「すみません。明良さん。私……」
「冷蔵庫に、氷ある?」
「あっ。さっきコンビニに行った時に、一緒に1袋だけですが買ってきました」
「でかした! 陽子ちゃん。それじゃ、よろしくね。終わったら、急いで行くから」
「はい。頑張ります」
「厄介な患者だから、健闘を祈ってる。それじゃ」
「失礼します」
エッ……。
そう言いながら高橋さんは、体温計のデジタル表示を見ている。
「あ、あの、何度でしたか?」
「ん?」
あっ。そうだ。
急いでシンク横に置いてあった、体温計のケースを取った。
「高橋さん。何度でしたか?」
「お前。ケースよこせ」
「嫌です。何度あったのか、教えて下さい」
少しだけキッと高橋さんを見たが、何故か高橋さんが額に左拳を当てて大きく溜息を突いた。
「まったく、お前は……」
観念したように、高橋さんが体温計を渡してくれた。
エッ……。
39度6分。
「ちょ、ちょっと、あの……。高橋さん。寝て下さい。い、今、何とかしますから」
「何とかする?」
「そ、そうです。何とかしますから、もうベッドで寝て下さい」
体温計をケースにしまってポケットに入れると、高橋さんの腰の辺りを全力で押してキッチンから追い出した。しかし、高橋さんはキッチンからは出たものの、寝室には向かおうとしないので、また腰を押した。
「高橋さん。お願いですから、寝て下さい」
「わ、分かった。分かったから、くすぐったいから腰触るな」
「えっ?」
慌てて腰から手を離すと、高橋さんが振り返った。
「す、すみません」
「全力出して、それだけか……」
ハッ!
な、何か、馬鹿にされてるような……。
けれど、高橋さんが寝室に入ってくれたので、ベッドに横になるのを確認してから寝室を出て、リビングの隅で壁に向かいながら慌てて明良さんに電話をした。
明良さんは、留守番電話になっていたが、暫くすると電話をくれた。
「39度6分?」
「そうなんです。高橋さん。とても辛そうなんです」
「分かった。それじゃ、陽子ちゃん。俺が行くまで、なるべく貴博の熱がこれ以上上がらないように体冷やしてくれる?」
「は、はい。あの……」
「アイスバッグが洗面所のシンクの下の扉を開けると入ってるから、それを脇の下と股間に置いてやってくれる? 確か、5個置いといたはずなんだ。脇も股間も左右両方と、あと額にも出来たらお願い出来るかな」
明良さん。股間って……。
無理だ。私には、無理。
「もしもし? 陽子ちゃん。聞いてる?」
「あっ。は、はい」
「恥ずかしいとか、そんなこと考えてるんじゃない? でも、人の事だけど具合が悪い人に力を貸すことに羞恥心は必要ないことでしょ? 恥ずかしいと思う気持ちは自身のことであって、その気持ちで人の具合は良くならないんだから力を貸すことにはならないよ」
明良さん……。
「そんなこと言ったら、俺なんて仕事にならないもん」
「すみません。明良さん。私……」
「冷蔵庫に、氷ある?」
「あっ。さっきコンビニに行った時に、一緒に1袋だけですが買ってきました」
「でかした! 陽子ちゃん。それじゃ、よろしくね。終わったら、急いで行くから」
「はい。頑張ります」
「厄介な患者だから、健闘を祈ってる。それじゃ」
「失礼します」
エッ……。

