新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

「はい。高橋さんの体温を、計っておかないといけないんです」
すると、首を傾げて私を見ていた高橋さんだったが、気づいたようで私をジロッと睨んだ。
「明良に言ったな?」
「すみません。心配だったので、明良さんに連絡してしまいました」
「熱は、大丈夫だろう?」
「そんなの駄目ですよ。ちゃんと計って下さい。体温計、何処ですか?」
「……」
高橋さんは、一向に応えてくれない。
仕方がないので、耳元で名前を呼んでみた。
「高橋さん!」
「お前。耳元で叫ぶな。頭がガンガンする」
「だって、体温計……」
「多分、机の引き出しとかに入ってるだろ?」
「リビングにある、パソコンが置いてある机ですか?」
「ああ」
「そうですか。ありがとうございます。机の引き出し開けさせて頂いて、探してみますね。その間、高橋さんは寝ていて下さいね。体温計ったら、ヨーグルト買ってきてありますから食べて下さい」
「フッ……。小姑みたい……だな」
ハッ!
こ、小姑って?
でも、今はそれどころじゃなかった。
明良さんに言われた、高橋さんの熱を計ることが最優先だったから。
リビングに向かい、パソコンが置いてある机の1番上の引き出しを開けてみたが、そこには書類や電卓しか入っていなかった。2番目の引き出しかな? そう思って2番目の引き出しを開けたが、此処はファイルやメモリースティック等が入っていて、体温計はやはり見当たらない。もしかして、普段使わないから1番下の引き出しかな? そう思って、1番下の引き出しを開けて、中に入っているものをどかしながら引き出しの奥底まで探していた。
エッ……。
無地の真っ白な封筒。
そのセンターに書かれた文字。