新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

扁桃腺?
熱持ってる?
「高橋さん。熱があるんじゃないですか? 横になった方が……」
「ああ、悪い。そうさせてもらう」
そう言うと、高橋さんは寝室の方へと消えて行ってしまった。
どうしよう……。
高橋さん。とても具合が悪そうだった。
具合の悪い高橋さんを1人にして、このまま帰ってしまっていいものだろうか?
でも、こういう具合の悪い時は、1人の方が気兼ねなく寝ていられるから私が居たら返って高橋さんが気を遣ってしまうんじゃ……。
だけど……熱がある時は、1人だと心細かったりする。だとしたら、何も役には立たないけれど高橋さんが安眠出来るように、静かにリビングに居た方がいいのかな?
どうしたら良いのか決めかねていると、足音がして高橋さんがドアの開いているリビングを通ってトイレの方に歩きかけたが、玄関に私の姿を見つけて驚いたように体を後ろに逸らすようにしてこちらを見た。
「お前。まだ居たのか?」
「あ、あの、高橋さん。私……ちょっと、お邪魔してもいいでしょうか?」
「……」
気づくと、自分でも思い掛けない言葉を口にしていた。
しかし、高橋さんは黙って私を見たまま、何も言ってくれない。
「や、やっぱり嫌ですよね。具合が悪い時に、誰かが部屋に居たら落ち着かないですもんね。す、すみません。余計なことを言ってしまって。高橋さん。お大事にして下さいね。それじゃ……」
エッ……。
焦りながら急いで挨拶をして、ドアの方を向いてドアノブに手を掛けた私の手を高橋さんが掴んでいた。
どうしよう。怒られちゃう……。
「あ、あの、本当にすみませんでした。ごめんなさい。私……」
「そうじゃない」
「えっ? あ、あの……」
掴んでいた私の右手から手を離した高橋さんが、首に左手を当てながら辛そうな表情を浮かべた。
「高橋さん。大丈夫ですか?」
私の右手を掴んだ高橋さんの手、凄く熱かった。
すると、高橋さんは黙って頷いた。
「とにかく、上がれ」
高橋さん……。
そう言って高橋さんはトイレに行ってしまい、高橋さんが居ないのに勝手に部屋に入るのはあれだったので待っていると、高橋さんが手招きをしたので急いで靴を脱いで後に続いた。