新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

たとえ警備本部で申告して入れたとしても、殆ど全てがIDカード管理されているので、自分のパソコンも立ち上げられない。
カードの高橋さんの顔写真を見ながら、いろんなことが頭の中を巡っていた。
お風呂に入りながら、高橋さんのIDカードをどうしたらいいのか考えていた。
やっぱり、月曜日にないと困るはず。連絡するにしても、もうこんな時間だからやめておこう。
明日の朝、どうするか考えよう。
お風呂から上がって、明日の朝、早く起きられる自信がなかったので、出張に持って行ったものを出して片付けながら洗濯をしてしまい、部屋の中に干してからベッドに入った。
高橋さん。そう言えば、明良さんと別れてから何処に行ったんだろう? 大きな溜息も突いたりしていて、高橋さんらしくなかった。おまけに、私が高橋さんのIDカードを持って帰ってきてしまったし……。でも、それにしても今回の初めての出張は、全く駄目だった。高橋さんに言われたことだけをこなすのに精一杯で、心に余裕がなくて自分から次はこれだろうと先に書類等を準備することすら出来なかった。まだまだ、駄目だなぁ。高橋さんに、負担を掛けるだけだったかも……。
そんなことを考えながら出張の反省をしていると、いつの間にか眠りに就いていたが、心の何処かで高橋さんのIDカードのことが気になっていたのか、翌朝は休日だというのに何時も通りの時間に起きてしまった。
高橋さんに、電話をするべきか、否か。
朝食のトーストをかじりながら、テーブルの隅に置いた高橋さんのIDをさっきから見つめている。
IDカードに付いている高橋さんの写真は、何時頃撮ったものなんだろう? 勿論、真面目な表情で写っているが、髪の毛がサラサラしているのが見て取れる。写真写り云々ではなく、こうして動かない写真の中の高橋さんでも何か格好いい。鼻筋が高くて何と言ってもとにかく目が綺麗。実際、この瞳で見つめられたら、誰だって緊張してしまうんじゃないだろうか。写真だというのに、何故か見ているだけでドキドキしてしまう。高橋さんは、本当に素敵だな。
ハッ!
いけない。朝から、こんなこと考えている場合じゃない。暢気にボーッとしている暇はなかったんだ。この高橋さんのIDカードを、何とかしなくちゃ。