「は、はい。ありがとう」
栗原さんは、トレーを持って配膳返却口の方へと向かっていった。
「陽子。大丈夫?」
「う、うん。何で?」
まゆみにいきなり言われて、そんなに顔に出てるのかと思い、さり気なく左手で左頬に触れた。
「誤魔化さなくていいわよ。聞いてたから」
「えっ?」
「全部は聞いてないけど。何たって、ハイブリッジが遊び人だとか何だとかって聞こえてきて、それで気づいたぐらいだから」
「で、でも、栗原さん。相当小声で言ってた筈なんだけど……」
「舐めちゃいけないよ? この地獄耳のまゆみさんはね、デシベル単位で小声ほどよく聞き分けられるのよ。こういう周りの会話も騒がしい場所では、小声でも40デシベルぐらいはいってるからね。だから聞き分けられるのよ」
はあ……。
「というのは建前で、たまたま通りかかったら陽子が困った表情しているのが目に入ったから。2人の視界に入らない位置でウロウロしてた」
まゆみが気づいて、そこまで見ててくれたなんて……。
「そうだったの。ありがとう」
「何がよろしくお願いしますよ。よろしくされたくないわ。あんな黒束子に」
「黒束子?」
「そうよ。あの、どっぷり付けすぎのまつげ。ありゃ、まるで黒束子だよ」
まゆみ……。
「あの黒束子。ハイブリッジのことをあんな風に言って、要は独り占めしたい思いの裏返しでしょう? 見え透いた魂胆だわね」
「そ、そうなのかな?」
まゆみが自信を持って断言しているが、本当のところはどうなんだろう? 高橋さんの学生時代のことを、私は殆ど知らない。ただ……好きな人が居て、その人のことを忘れられないだろうと高橋さんが言ってたことだけは事実。
「そうなのよ。あんな黒束子の言うことなんか、信じちゃ駄目。いい? 分かった?」
「う、うん。分かった」
まゆみは、まだ半信半疑だった私に、自分が知っている高橋さんの情報を教えてくれた。
それを聞いていると、とてもじゃないが栗原さんの言うようなことは仕事が忙しくて出来そうにないように思えた。ニューヨークに、出向もしていたし……。
ただ、高橋さんの学生時代のことは、流石にまゆみでもよく分からないらしくて、直接高橋さんに聞いてごらんと言われてしまった。
「それじゃ、またね」
「うん。陽子。あの黒束子に振り回されちゃ駄目よ?」
「う、うん。分かった」
まゆみと別れて、パウダールームとトイレに寄って事務所に戻ると、もう高橋さんと中原さんも戻ってきていた。
良かった。高橋さんと中原さんが戻ってきてくれて、ホッとした。
栗原さんは、トレーを持って配膳返却口の方へと向かっていった。
「陽子。大丈夫?」
「う、うん。何で?」
まゆみにいきなり言われて、そんなに顔に出てるのかと思い、さり気なく左手で左頬に触れた。
「誤魔化さなくていいわよ。聞いてたから」
「えっ?」
「全部は聞いてないけど。何たって、ハイブリッジが遊び人だとか何だとかって聞こえてきて、それで気づいたぐらいだから」
「で、でも、栗原さん。相当小声で言ってた筈なんだけど……」
「舐めちゃいけないよ? この地獄耳のまゆみさんはね、デシベル単位で小声ほどよく聞き分けられるのよ。こういう周りの会話も騒がしい場所では、小声でも40デシベルぐらいはいってるからね。だから聞き分けられるのよ」
はあ……。
「というのは建前で、たまたま通りかかったら陽子が困った表情しているのが目に入ったから。2人の視界に入らない位置でウロウロしてた」
まゆみが気づいて、そこまで見ててくれたなんて……。
「そうだったの。ありがとう」
「何がよろしくお願いしますよ。よろしくされたくないわ。あんな黒束子に」
「黒束子?」
「そうよ。あの、どっぷり付けすぎのまつげ。ありゃ、まるで黒束子だよ」
まゆみ……。
「あの黒束子。ハイブリッジのことをあんな風に言って、要は独り占めしたい思いの裏返しでしょう? 見え透いた魂胆だわね」
「そ、そうなのかな?」
まゆみが自信を持って断言しているが、本当のところはどうなんだろう? 高橋さんの学生時代のことを、私は殆ど知らない。ただ……好きな人が居て、その人のことを忘れられないだろうと高橋さんが言ってたことだけは事実。
「そうなのよ。あんな黒束子の言うことなんか、信じちゃ駄目。いい? 分かった?」
「う、うん。分かった」
まゆみは、まだ半信半疑だった私に、自分が知っている高橋さんの情報を教えてくれた。
それを聞いていると、とてもじゃないが栗原さんの言うようなことは仕事が忙しくて出来そうにないように思えた。ニューヨークに、出向もしていたし……。
ただ、高橋さんの学生時代のことは、流石にまゆみでもよく分からないらしくて、直接高橋さんに聞いてごらんと言われてしまった。
「それじゃ、またね」
「うん。陽子。あの黒束子に振り回されちゃ駄目よ?」
「う、うん。分かった」
まゆみと別れて、パウダールームとトイレに寄って事務所に戻ると、もう高橋さんと中原さんも戻ってきていた。
良かった。高橋さんと中原さんが戻ってきてくれて、ホッとした。

