「わ、分かったよ。社員証でいいよな」
そう言うと、男性は高橋さんに社員証を見せたらしく、高橋さんは私の右腕に触れていた右手でそれを受け取って見ているようだった。
「これは返すが、万が一、何かまたあった場合は会社に通報するから、そのつもりで」
「わ、分かった。それじゃ」
男性は、慌てて走り去っていったようで、走る足音がだんだん小さくなっていった。
「大丈夫か?」
男性が暫く前を向いていた高橋さんが、私に向き直った。
「は……」
返事をしたつもりが、空気が漏れたような言葉にならないような声だった。
「もう、大丈夫だ」
高橋さん……。
黙って頷くと、今まで堪えてきたものが一気に限界に達し、怖さが蘇ってきて両手を合わせて口元に寄せたが手の震えが止まらない。
「お前……。震えてる」
そう言うと、高橋さんが両腕を掴んでくれていた。
「大丈夫だ。あの男の身分も分かったから、何かしたら会社に通報されることを恐れてもうしないだろう。もし、近所だったりしたら困ったが、どうもこの近辺には住んでないみたいだし、お前の家も幸い相手にバレてはいないようだから」
黙って頷きながら、高橋さんが瞬時にそこまで考えてくれていたことに驚いていた。
だから、あんな厳しい言い方をして、男性の身分を知ろうとしてくれたんだ。
「いいか? こういうことは、あっては困るんだが、もしかしたらまたこういうことが起きるかもしれない」
高橋さんの言葉に顔をあげると、穏やかな表情で高橋さんは私の肩に手を置いた。
「覚えておいてくれないか? 自宅の近所でこういうことに遭遇した時は、決して自宅に逃げ込むな」
エッ……。
さっき、とにかく早く自宅に帰ろうと思っていたので、高橋さんの言葉が予想外だった。
「もしも、自宅が相手に分かってしまうと、その方が後々、大変だろう? そうなると、自宅を引っ越すことも考えなければならなくなる。だから、逃げるなら、人通りの多い方に向かうようにしろ。駅に戻るのもいい。コンビニに駆け込むのもいい。とにかく、誰か居るところに行くようにしろ。勿論、携帯で警察に電話するのが、最善の策だが」
高橋さんの言葉に、ただ黙って頷くことしかできなかったが、頷きながら涙が溢れていた。
「マンションまで、送って行こう」
そう言うと、男性は高橋さんに社員証を見せたらしく、高橋さんは私の右腕に触れていた右手でそれを受け取って見ているようだった。
「これは返すが、万が一、何かまたあった場合は会社に通報するから、そのつもりで」
「わ、分かった。それじゃ」
男性は、慌てて走り去っていったようで、走る足音がだんだん小さくなっていった。
「大丈夫か?」
男性が暫く前を向いていた高橋さんが、私に向き直った。
「は……」
返事をしたつもりが、空気が漏れたような言葉にならないような声だった。
「もう、大丈夫だ」
高橋さん……。
黙って頷くと、今まで堪えてきたものが一気に限界に達し、怖さが蘇ってきて両手を合わせて口元に寄せたが手の震えが止まらない。
「お前……。震えてる」
そう言うと、高橋さんが両腕を掴んでくれていた。
「大丈夫だ。あの男の身分も分かったから、何かしたら会社に通報されることを恐れてもうしないだろう。もし、近所だったりしたら困ったが、どうもこの近辺には住んでないみたいだし、お前の家も幸い相手にバレてはいないようだから」
黙って頷きながら、高橋さんが瞬時にそこまで考えてくれていたことに驚いていた。
だから、あんな厳しい言い方をして、男性の身分を知ろうとしてくれたんだ。
「いいか? こういうことは、あっては困るんだが、もしかしたらまたこういうことが起きるかもしれない」
高橋さんの言葉に顔をあげると、穏やかな表情で高橋さんは私の肩に手を置いた。
「覚えておいてくれないか? 自宅の近所でこういうことに遭遇した時は、決して自宅に逃げ込むな」
エッ……。
さっき、とにかく早く自宅に帰ろうと思っていたので、高橋さんの言葉が予想外だった。
「もしも、自宅が相手に分かってしまうと、その方が後々、大変だろう? そうなると、自宅を引っ越すことも考えなければならなくなる。だから、逃げるなら、人通りの多い方に向かうようにしろ。駅に戻るのもいい。コンビニに駆け込むのもいい。とにかく、誰か居るところに行くようにしろ。勿論、携帯で警察に電話するのが、最善の策だが」
高橋さんの言葉に、ただ黙って頷くことしかできなかったが、頷きながら涙が溢れていた。
「マンションまで、送って行こう」

