「君と此処で会ったのも、何かの縁かもしれないと思わない?」
はい?
いきなり男性が、そんなことを言い出した。
「あ、あの、い、急いでますので」
行く手を塞がれてしまっていたので、右に寄って歩いて行こうとしたが、またその男性も同じように移動して私の目の前にまた立ち塞がったので、今度は左に寄ったがまた同じことをされてしまった。
「すみません。どいてもらえませんか?」
「喉が渇いてるから、これから飲みに行かない?」
この人、何を言ってるんだろう?
「わ、私、飲めませんので。失礼します」
強行に車道に出て男の人をかわして、もう一度歩道に戻って歩き出すと、自然に小走りになっていた。
「何だ、子供か」
こ、子供?
後ろで、そんな声がしている。
子供でも何でもいい。とにかく、早く男性から離れたかった。
それなのに、自分の走る音と違う足音も聞こえる。
「ねえ、待ってよ」
何なの?
もう、嫌だ。
もっと早く走りたいのだけれど、左足の怪我がまだ完全に治っていないので、痛くて思うように走れない。
足音が大きくなってきていて、男性が近づいてきているのが分かり、怖くて後ろを振り返った途端、左手首を掴まれてしまった。
「嫌……」
間近で見た男性は、先ほどと同じように笑っていて、怖くて声が出ない。
「飲みに行こうよ」
「は、離してく……」
「おい!」
エッ……。
今、確かに男性とは違う声が聞こえた。見ると、道路の向こう側に1台のタクシーが停まって、乗車口のドアが開いた。
「そこで、何してる?」
嘘。
「高橋さん……」
ドアが開いたと同時に、タクシーから高橋さんが降りてきた。
「知り合い? まずいな」
高橋さんは、瞬時に左右を見て車が来ないかを確認すると、走って道路を横断してきた。
「お客さーん。お釣り」
タクシーの運転手さんが、運転席の窓から高橋さんを呼んでいる。
「とっといてくれ」
高橋さんは、途中で振り返りながら運転手さんにそう告げると、道路を渡り終えた高橋さんが男性と私の間に入り、男性と向き合った。
「知り合いか?」
「今、知り合った」
今、知り合ったって……。
「何でしょう? 彼女に、何か用事でも? 腕を掴んでいたようだが、どういうことだ?」
前に立っている高橋さんの右手が、後ろに居る私の右腕にそっと触れていた。
「い、いや。そうじゃない。一緒に飲みに行こうと思って、誘ってただけだよ」
「断る」
後ろで聞いていても高橋さんの即答する声に抑揚感はなく、きっと漆黒の瞳で男性の視線を捉えているのが容易に想像できる。
「この近くの人間か?」
「違う。俺の彼女を送ってきて、駅まで1人で帰るのが退屈だったから声掛けただけだから」
「それならば、身分証明書を見せてくれ」
高橋さん……。
「でも、それ個人情報だか……」
「それならば、今から警察に行くか? 明らかに、彼女に対してとった行為は……」
はい?
いきなり男性が、そんなことを言い出した。
「あ、あの、い、急いでますので」
行く手を塞がれてしまっていたので、右に寄って歩いて行こうとしたが、またその男性も同じように移動して私の目の前にまた立ち塞がったので、今度は左に寄ったがまた同じことをされてしまった。
「すみません。どいてもらえませんか?」
「喉が渇いてるから、これから飲みに行かない?」
この人、何を言ってるんだろう?
「わ、私、飲めませんので。失礼します」
強行に車道に出て男の人をかわして、もう一度歩道に戻って歩き出すと、自然に小走りになっていた。
「何だ、子供か」
こ、子供?
後ろで、そんな声がしている。
子供でも何でもいい。とにかく、早く男性から離れたかった。
それなのに、自分の走る音と違う足音も聞こえる。
「ねえ、待ってよ」
何なの?
もう、嫌だ。
もっと早く走りたいのだけれど、左足の怪我がまだ完全に治っていないので、痛くて思うように走れない。
足音が大きくなってきていて、男性が近づいてきているのが分かり、怖くて後ろを振り返った途端、左手首を掴まれてしまった。
「嫌……」
間近で見た男性は、先ほどと同じように笑っていて、怖くて声が出ない。
「飲みに行こうよ」
「は、離してく……」
「おい!」
エッ……。
今、確かに男性とは違う声が聞こえた。見ると、道路の向こう側に1台のタクシーが停まって、乗車口のドアが開いた。
「そこで、何してる?」
嘘。
「高橋さん……」
ドアが開いたと同時に、タクシーから高橋さんが降りてきた。
「知り合い? まずいな」
高橋さんは、瞬時に左右を見て車が来ないかを確認すると、走って道路を横断してきた。
「お客さーん。お釣り」
タクシーの運転手さんが、運転席の窓から高橋さんを呼んでいる。
「とっといてくれ」
高橋さんは、途中で振り返りながら運転手さんにそう告げると、道路を渡り終えた高橋さんが男性と私の間に入り、男性と向き合った。
「知り合いか?」
「今、知り合った」
今、知り合ったって……。
「何でしょう? 彼女に、何か用事でも? 腕を掴んでいたようだが、どういうことだ?」
前に立っている高橋さんの右手が、後ろに居る私の右腕にそっと触れていた。
「い、いや。そうじゃない。一緒に飲みに行こうと思って、誘ってただけだよ」
「断る」
後ろで聞いていても高橋さんの即答する声に抑揚感はなく、きっと漆黒の瞳で男性の視線を捉えているのが容易に想像できる。
「この近くの人間か?」
「違う。俺の彼女を送ってきて、駅まで1人で帰るのが退屈だったから声掛けただけだから」
「それならば、身分証明書を見せてくれ」
高橋さん……。
「でも、それ個人情報だか……」
「それならば、今から警察に行くか? 明らかに、彼女に対してとった行為は……」

