新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

「ハッ……」
ただ空気を吐き出しただけの、感嘆の声をあげてしまった。
サンルーフの開いた部分から、見えたもの。
それは、手を伸ばせば掴めそうに感じられるほどの、綺麗に光る無数の星。
天空に、所狭しと散りばめられた星は、夜空を黒から白へと変えてしまうぐらいの無限の輝き。
「綺麗……」
サンルーフの小さなスペースからだけでは、もったいないような気がして、思わず助手席のドアを開けて外に出ようとした。
「お前。外は寒いぞ」
「えっ? 大丈夫です」
高橋さんの忠告を無視して、車の外に出た。
うわっ。
やっぱり、寒いかも……。
まだ10月なのに、此処は都心より気温がだいぶ低く感じられた。
でも、凄い星の数と輝きに圧倒されて、何だか寒さも忘れてしまっている。
後ろでドアの閉まる音がして、高橋さんも車から降りてきたみたいだったけれど、空を見上げたまま、視線は無数の星の輝きに魅了されていた。
「ほら、風邪ひくぞ」
「あっ、すみません」
高橋さんが、車の中に置いてあった私のジャケット持ってきてくれた。
「綺麗だろ?」
「はい。本当に、凄く綺麗です」
高橋さんを見ると、高橋さんも空を見上げていた。
しばし、会話も忘れ、高橋さんも私も黙って自分の世界に入りながら星空を見上げていたが、不意に音がしたので振り返ると、高橋さんがトランクからフリースのブランケットを 2枚持ってこちらに向かって来た。
「こっち」
エッ……。
高橋さんが私の手首を持って、私の左足を気遣いながらゆっくりと歩き出した。
そして、私の身長より少し低いぐらいの暴風壁のような奥行きのあるコンクリートの塀の上に、1枚のブランケットを敷いた。
何をするんだろう?