新そよ風に乗って ③ 〜幻影〜

もう、入社して3年目なのに、何も進歩していない。改めて、それを今日実感してしまった気がする。
「どうした?」
無意識に立ち止まっていたらしく、前を歩く高橋さんが振り返って声をかけてくれた。
「いえ……。高橋さん」
すると、高橋さんが戻ってきて、私が立っている置き石の1個先の石の上に立った。
「何だ?」
目が合った高橋さんの瞳は、とても穏やかで優しい色を成している。
この優しい瞳に、甘えてしまうから……。
「ごめんなさい。私……」
「何がだ?」
「私、仕事が出来なくて、全然、出来なくて」
「……」
「夏目さんや折原さんのようには無理ですが、でも……」
そう言いかけた時、ちょうど後ろからお店から出て来た人が歩いてきていた。
「車まで、行こう」
「はい」
高橋さんに言われて話の途中だったが車まで戻ると、高橋さんが助手席のドアを開けてくれた。
「乗って」
「あの……」
「いいから」
車の前で話そうと思っていたが、高橋さんに押し切られるように助手席に座らされてしまった。
高橋さんが運転席に座ると、直ぐにエンジンをかけた。
「あの、高橋さん」
「ちょっと、付き合え」
「えっ? あの……こ、これからですか?」
「今夜、遅くなってもいいか、聞いただろう?」
高橋さん……。
高橋さんの車は、大通りを走って私のマンションへ続く曲がる道に近づいてきた。
エッ……。
しかし、 高橋さんは私のマンションに続く交差点を曲がらずに、通り過ぎてしまった。
一応、念のために聞いてみようかな。
「あの……高橋さん。今の交差点を、曲がるじゃなかったでしたっけ?」
「ああ、そうだ。よく覚えたな」
うっ。
そのひと言で片付けられてしまい、その先を聞くことができない。
やっぱり、今夜は遅くなることと何か関係が?
「高橋さん。これから、何処に行くんですか?」
一番知りたい、聞きたいことを、思い切ってぶつけてみた。
すると、ちょうど赤信号で停まったので、高橋さんがこちらを向いた。
「ん? ヒ・ミ・ツぅ」
ハッ?