そう言いたいのを抑えて、私はお手洗ではなく中層ビルへ向かう。
蒼凰さんにも刺客にも気づかれないように、蒼凰さんたちから死角にある出入口から出たり、遠回りをしたりして工夫し、私は中層ビルの入口へ到着した。
敵がいるのはおそらく最上階の五階。
でも敵の人数が分かっていない限り、どの階でも細心の注意を払わなければならない。
それをきっちりと心に留めて、私は拳銃片手に中に足を踏み入れた。
……物音はしない。
気配も消してる……?
でも気づかれたとは思えない……
あまりに静かすぎるのでもしかしてもう逃げられたのかと思いながら、私は階段を上がっていく。
そして四階まで上がってくると、息を潜めていた敵がドアの裏から五人現れた。
「ああ?」
「女か?まぁ関係ねぇ……オラァ!」
拳銃は一度しまって、相手同様こちらも拳で勝負する。
相手は大学生くらいで、自分よりも体が大きい。
身長は百八十センチを超えていそう。
でも……
「遅い」



