「ただいまー」
わたしはスーパーで材料を買った後、家へ帰ったけれど、どうやら恵理奈も沙也加もいないみたいだった。
ペタペタと歩きながら、わたしは思わずお母さんがいる部屋へと向かってしまう。近づけば近づくほど、どんどんお母さんの泣き声が聞こえてくる。
「わ、私は……無責任な、母親……。母親、失格……」
「お母さん!」
お母さんの目は、涙で真っ赤だった。
このお母さんの真っ赤な目、一体わたしは何度見たことか。
「やめて……お母さんは、母親失格じゃない……」
「夏彦、夏彦ぉ……。私と引き換えにしてあげられなくてごめんなさい……。夏彦、お見舞い行けなくてごめんなさい……」
「お母さん……」
お母さんの耳には、どうやらわたしの話が全然入ってきていないようだった。
まあ、話をまともに聞けないだろうとは最初から思っていたけど……。
お母さんは、夏彦お兄ちゃんのお見舞いに行けなかったこともずっと悔やんでいる。
でも、実際仕方のないことなのだ。
だって、お母さんの子供は夏彦お兄ちゃんだけじゃない。
恵理奈、沙也加、そしてわたし。
そしてわたし達3人は何よりみんな年子であり、夏彦お兄ちゃんよりも年下。
だからわたし達の面倒を見なきゃ行けないことで、なかなか夏彦お兄ちゃんのところへは行けなかった。
仕方のないことなのに、その言葉では片付けられなくて、お母さんは悔やんで苦しんでもがいて、ずっと進めない。



