「信じられない」を、「真実の愛」に変えてくれたキミへ


「お邪魔しまーす。……って、あれ? 翠ママは?」



翠ママは、家で仕事をすることが多くてわたしが遊びに来た時も必ずといっていいくらいに歓迎してくれる。


けれど、珍しく翠ママは家にいないみたいだった。



「ママは、急に用事ができちゃったみたいで。本当は、百々葉に会いたいって言ってたんだけど。代わりに、ほら」



翠はそう言いながら、棚から箱を持ってきた。

金色の文字を使って筆記体で書かれてあり、見るからにすごくおしゃれなお店で買った時に店員さんが入れてくれそうなデザインだ。


翠が箱を開けると、可愛いカップケーキがいくつも入っていた。



「わぁー! 可愛い、それに美味しそう」



色々なクリームが絞られていて、チョコスプレーやフルーツが飾られている。


あんまり可愛いデザインだったので、思わず声を上げてしまった。

まるで、さっきまで暗いトンネルの中にいたのに、明るいお花畑へ繋がった出口に出られたみたい。



「ママの知り合いが、おまけしてくれたんだって」



翠ママには、パティシエをしている知り合いがいて、わたしにも時々お裾分けしてくれている。



「えぇっ!食べちゃおう!」



「そうだ、百々葉。お姉ちゃん達に、これお土産として持って帰ってよ」



翠は、もうお土産用にケーキをまとめておいてくれたみたいだった。



「ありがと。なんか悪いなぁ」



「いいの、いいの! 百々葉は、あたしに対しては遠慮なし!」



そう言って、翠がケーキをつまんだことでわたしもそばにあったカップケーキをパクリと口に入れた。