「そうか、なら良かった。でも、なんでさぼってたんだ?」
さっきまでニヤニヤとしていた顔は一変し、ひーくんはわたしに不思議そうな表情を向けた。
「うーんと……」
もうひーくんと親しげに呼んでいるといえど、今日はまだ初対面だからなぁ……。
そんなに自分のことをさらけ出して大丈夫かなぁ……。
「百々葉、別に授業さぼるような不良には見えないんだけど」
「あぁ……」
「まさか、常習犯?」
「ち、ちがっ!!」
「なんで、今日はさぼったんだよ?」
「それはー……」
疑うのが失礼なのはわかっているんだけど……。
でも、お父さんや京ちゃんに裏切られたわたしからすると、男の人に本当のことを言う勇気がなかなか持てない。
でも、何も答えないでひーくんをイライラさせちゃうのも嫌だし……。
「百々葉ー! お待たせー!」
わたしの気持ちとはまるで正反対に、明るくて大きな声が聞こえてきた。
忘れ物を取りに行っていた翠が、戻ってきたんだ。
「あっ、翠!」
「さ、行こっか!」
「うん!」
わたしはせめて、ひーくんに申し訳ないという気持ちを込めて会釈しながら、翠と帰った。



