「そりゃ、寂しかったよね」

 ウェズリー様が答えたので、何を言い出すのかと思ったら……

「十二歳の女の子が一人で国を離れるのは勇気が要ったと思うよ」

 うんうんと、頷くウェズリー様。


「出る必要は無かったんではないか? 親しくしていたのに一言の挨拶もなく出て行くなんて非常識だ! 心配するだろう? 伯爵に何度聞いても居場所を教えてくれなかった」

「幼馴染だけど、異性だからね。親しくしていても婚約者でもなんでもないのだから、言う必要性が感じられない」

 うんうんと、頷くウェズリー様。

「ウェズリー殿に聞いてはいない。ミシェル答えよ!」


「お別れの挨拶は致しました。元より殿下に婚約者が出来るまで、遊び相手として王宮に出入りが許されていた身ですもの。遅くなりましたが、東の国の第三王女殿下とのご婚約を心よりお祝い申し上げます」


「そういうことを聞きたいのではない! ウェズリー殿と親しいようだが、なぜウェズリー殿がミシェルといるんだ!」


「それは、」

 と言うと、ウェズリー様に止められた。私から説明するからとこそっと言われたので、頷く。


「私とミシェルは婚約したんだよ。つい先日の話だったからまだ公にはなってないんだ。
 陛下から私が留学するという話は聞いていただろう? 王宮に住むように勧められたんだけど、アルディ伯爵家の邸の近くに家を借りたんだ。これでミシェルの近くにいられるからね」


 手をギュッと繋がれた。