【コミカライズ】そんなことも分からないの?

『これ、姉が尋ねそうなことをまとめた想定問答です。これまで私が尋ねられたこと、その模範回答を書いてきたので、参考にしてもらったら嫌味を言われる回数が少なくなると思います。もちろん、ここに書いていない内容を聞かれることもあると思うんですけど……』


 イネスの頬が熱くなる。あまりにも気恥ずかしくて、イネスはパッと顔を背けた。


「そ……そんなところまで見ていらっしゃったのですか?」

「ああ、見ていた! 君は前回やり玉にされた侍女の分だけでなく、他の侍女たちの分まで想定問答を作っていた。あれを作るのは並大抵のことではない。きっと、何日もかかったに違いない。
そのときから、俺はイネスのことがとても好きだった! いつか結婚したいと望んでいた! 君を幸せにしたいと願い、己を磨き続けていたんだ」


 リオネルの唇が、甘やかすように額や頬に優しく触れる。


(嬉しい)


 苦しかったことも、悲しかったことも決して無駄ではなかった。あの日々があったからこそ、イネスはリオネルと出会い、彼の温かさに包まれ、幸福な日々を送れている。


「リオネル様、私、貴方が大好きです!」


 イネスが思いの丈を打ち明ければ、リオネルは目を丸くし、それからとても嬉しそうに破顔する。


「ああ、知っている!」


 二人は顔を見合わせると、互いをギュッと抱き締めるのだった。