『辛いですよね……大丈夫。私もいつもあんなふうに怒られるんです。あんな知識、持っていないほうが普通です。だけど、一度問われたことに次回も答えられなかったら、姉からの叱責が加速してしまう。ですから、今から私の言うことを覚えてください』
「――――見ていらっしゃったのですか?」
「ああ」
リオネルはそう言って力強く頷く。イネスは大きく息を呑んだ。
リオネルのことは覚えていないが、侍女を慰めたことは鮮明に覚えている。はじめてイザベルの洗礼を受け、青褪め、今にも逃げ出してしまいそうな侍女を、とても気の毒に思ったから。
「茶会では君だって何度もやり玉にされていたのに、侍女のほうを気遣い、己の知識を分け与えられる――――とても強くて優しい子だと思った。
それに、話はそれだけでは終わらない。
その次の茶会の前、イネスは侍女たちに分厚い紙の束を渡したんだ」
「――――見ていらっしゃったのですか?」
「ああ」
リオネルはそう言って力強く頷く。イネスは大きく息を呑んだ。
リオネルのことは覚えていないが、侍女を慰めたことは鮮明に覚えている。はじめてイザベルの洗礼を受け、青褪め、今にも逃げ出してしまいそうな侍女を、とても気の毒に思ったから。
「茶会では君だって何度もやり玉にされていたのに、侍女のほうを気遣い、己の知識を分け与えられる――――とても強くて優しい子だと思った。
それに、話はそれだけでは終わらない。
その次の茶会の前、イネスは侍女たちに分厚い紙の束を渡したんだ」



