【コミカライズ】そんなことも分からないの?

「いや、大した会話は交わしていないんだ。ほんの一言、二言。
ただ、俺は以前から君のことを知っていた。強くて優しい、イネスのことを」


 そうして優しく頭を撫でられ、ふと過去の記憶がよみがえる。


(そういえば、以前もここで、誰かが私のことを撫でてくれたっけ)


 涙でよく顔を見れなかったが、あれはリオネルだったのだろうか? そう思うと、胸がドキドキと騒ぎ出した。


「あるとき、茶会の席で茶葉の知識、歴史や紅茶の淹れ方のノウハウなど、妃殿下からの質問になにも答えられなかった侍女が居た。『そんなことも分からないの?』と問う妃殿下に、侍女は何度も謝罪をし、後でひっそりと涙していたんだ。
気の毒だと思って見ていたら、君が彼女のところにやって来たんだ」