【コミカライズ】そんなことも分からないの?

「イネス、一緒について来てくれないか?」

「え?」


 リオネルがそっと目を細める。イネスは目頭が熱くなった。


「君がこの土地を気に入ってくれているのは知っている。長旅で負担をかけて申し訳ないという気持ちもある。だが、俺は君と片時も離れたくない! 俺と一緒について来てほしい!」

「リオネル様……」


 こんなふうに己の心に寄り添ってもらえることが嬉しい。
 求めてもらえることが嬉しい。

 イネスはずっと、自分の生涯はイザベルのためにあるのだと思っていた。彼女の人生を彩るため、汚点を残さないためだけに結婚をするのであって、愛されることも、愛すこともないだろう――――そう覚悟していたというのに。


「ええ、もちろん。喜んでついて行きます」


 どこへでも、どこまでも。
 そんな気持ちを胸に、イネスはそっと微笑んだ。