『ゴラァ!そんなこともできないのかぁ!?ちゃんとやれゴラァ!もう一度、アフタクトからぁ!』

吹奏楽部顧問である男性教員の怒号が、狭い音楽室に響き渡った。

指導に熱が入り過ぎてしまっているようだ。

そんな先生の様子を見て、クラリネット奏者のショウカはうんざりしていた。

というのも、ショウカが所属する高校の吹奏楽部は、全国大会に出場するような強豪校ではない。

数年に一度くらい、地区大会を突破する程度の実力の学校だ。

にも関わらず、強豪校の様な熱血指導を繰り広げる先生の態度を、彼女は理解ができなかった。

それでもショウカが退部をせず、高校生2年生となった現在まで部活動を続けている理由は、純粋に音楽が好きだったからだ。

しかし、それも限界が近いようだ。

個人練習不足の状態で行われる全体練習。

実力に見合わない曲の選定。

無意味な反復練習。

それらが連日のように続いている。

ショウカが退部を決意するのは、時間の問題かもしれない。