彼は私をとても優しく噛んだ。
 少しだけチクッとしたけれど。

 噛まれる直前に意識がぼんやりとしてきたけれど、本当に優しく噛んでくれているのが伝わってくる。

 永遠の命を得て、そして彼と番になる。

 一体私はどうなってしまうんだろう。
 彼に身をゆだね、私は目を閉じて自分の身体全体に集中した。

 血を吸われている感触が分かる。同時に吸われている場所からじわりじわりと血液全体に何か温かいものが流れ込んでくる感じがした。

 吸われているはずなのに、流れてくる感触の方が多い。

 一説によると、吸われた瞬間ふたりの感情も循環されるらしい。私のせいである、彼の悲しみや寂しさの痛みも一緒に流れてきている気がした。全て私に流してほしい。 

 彼の全てが幸せで満たされていてほしい。

「悪いもの全て受け止めるから、痛みの感情も全部流して……」

 私は話すのもしんどくなっていたけれど、小さな声で呟いた。

 想さん、前世では離れてごめんなさい。
 もう、絶対に離れません。
 永遠に幸せでいられると信じて――。