彼女は自ら首を僕のすぐ噛める位置にだしてきて、目を瞑る。

「どうぞ」

 平気なふりをしているのに、微かに震えている彼女。それはそうだ。彼女の人生が変わってしまうのだから。

 変化は怖い。本来失わずにすんだことも失い、感じなくてもいいはずだったマイナスな感情だって襲ってくる場合もある。

「……」

 変化を一番恐れて、逃げていたのは自分だ。あの時、表面上ではあの子が僕から逃げていたようにみえるけれど、向き合わずに、逃げたのは自分だ。
 
 番となる覚悟を決めた。

 彼女と向かい合わせになり、身体をそっと包み込んだ。
 そして、出来るだけ彼女に痛みを感じないように、優しく噛んだ。