私はずっと考えていた。
 なぜ前世をこのタイミングで思い出したのか。

 学祭まであと3日。
 準備で忙しくなって、最近は天宮くんと話すタイミングがあまりなかった。

 そんな中、職員室前の廊下で天宮くんと偶然会った時、前世の記憶があることを打ち明けた方がいいのかな?って思う言葉を彼から聞いた。

「兄貴、清香ちゃんに対して冷たいけれど、それには理由があるんだ」って。

 理由は、悲しい思いを天宮くんにしてほしくないから、らしい。

 昔、想さんは恋人に裏切られた。天宮くんから見ても絶対に結ばれると思っていたふたり。想さんは一途だったけれど、相手が別の人を好きになって、去っていったという。それで想さんは心に深い傷を負い、心に闇を抱えてしまったらしい。

 恋をすると傷つく。

 そんな同じ思いを弟の天宮くんにしてほしくなくて。
 だから想さんは私を天宮くんから離したくて。

 その話、心当たりがありすぎた。
 そして3人で遊んだ辺りから想さんの様子がおかしいらしい。

「それって、私なんだ」
「ん? 清香ちゃん?」
「うん。私ね、想さんの元恋人なの」

 天宮くんは不思議そうな顔をしながら言った。

「でも、その話って、100年前だよ? 清香ちゃんまだ生まれてないよ」

「それを言うなら、天宮くんたちだって生まれてないでしょ?」

「あっ……」

 彼は動揺したのか、手に持っていたノートを落とした。

「あのね、隠していると思うんだけど、私、天宮くんたちがヴァンパイアなの知ってるんだ」

 ノートを拾おうとしている彼の手が完全に止まった。

「天宮くん、ここじゃあれだから、後できちんと話そ?」