「どうしたの?」

 リビングに戻ると天宮くんがいて、声をかけてきた。

「どうしたって?」
「いや、今にも泣きそうな顔してるから」
「何にもないよ」
「嘘だ。清香ちゃん、大丈夫?」

 天宮くんが力強く抱きしめてきた。

「大丈夫じゃないでしょ? 清香ちゃんを、もっと知りたい」

 彼が耳元でそう呟く。

「清香ちゃんがほしい。だから、噛ませて?」
「えっ?」 

 天宮くんの牙が首元に触れた。
 もしかして、私の血を吸おうとしてる?

 もし吸われたら、天宮くんと番になって、私に永遠の命が……。

「突然、何? 嫌だ、嫌だよ!」

 噛まれるのかなって思っていたけど、私が必死に抵抗すると彼の動きが止まった。

「ごめん……ごめんなさい」

 彼の声が震えていた。

「本当は、お互いに好きになって、清香ちゃんが納得して、それから血を吸おうと思ってたんだけど、待つ余裕がなくて……」

 再び彼の牙が首に当たる。

「琉生!」

 その時、想さんの叫ぶ声がした。
 想さんは勢いよく天宮くんを突き飛ばした。