「何してる?」

 写真を見つめていると背後から想さんの声がした。勢いよく部屋に入ってきて、彼は写真立てを倒した。写真は一瞬で見えなくなった。

「勝手にみるなよ」
「……ごめんなさい」

 今日も冷たい口調……。
 いつも以上に冷たいかも。

 じっとこっちを見てきた想さんはいきなり視線を不自然にそらしてきた。私を完全に受け入れてなくて、話もしたくない雰囲気が伝わってきたけども、私は聞かずにはいられなかった。

「この写真の人、好きな人ですか?」と。

「……好き、じゃない」
「じゃあ、なんで飾って……」

 今の私は、写真の私じゃないし。
 別に飾る飾らないなんて自由だし、詮索することじゃない。

 なのに、すごく気になる。

「いきなり、変な質問してごめんなさい。そんな親しくもないのに、こんなプライベートな質問、なんかキモイですよね」

 私は部屋を出た。

“好きじゃない”って言われて、どん底に気持ちが落ちていく感じがした。

 私はきっとまだ、ずっと、想さんのことが好き。
 そして、前世の私のことを、ずっと好きだと思っていてほしかった。

 前世では自分から離れたのに、どうしようもないほどにわがままだ。
 思い出してから想さんへの『好き』って気持ちが溢れてゆく。