「そういえば夏海ね、来れなくなったって……」
「そうなんだ」
「どうしよう。夏海がカラオケ行きたいって言ってたから、カラオケ選んだんだけど」
「映画とかは?」
「映画? 天宮くんは映画よく観るの?」
「俺? いや、全然観ない」
「何それ……観ないのに提案したの?」

 ふたりは笑いあっている。
 目の前にいるふたりが仲良さげに話している。

 見ていると不快だ。
 とにかく不快だ。

 結局3人で映画を観ることになった。

 ちょうど映画館に入った時にタイミングよく上映時間だった『キミだけに恋をする』という題名の映画を観た。

 内容は人間同士が恋をして喧嘩して再び愛し合うよくある話で、僕とは無縁の内容だった。

 映画が終わった後もふたりは楽しそうに感想を言い合ったりしている。

 ふたりが楽しそうに話をしていると、情緒不安定になってきて、耐えられなくなりそうなくらいな気持ちになってきた。映画館を出た後、一旦ふたりから離れた。

 適当に映画館周辺を歩く。
 歩きながら考えた。

 直接、琉生に近づかないでと彼女に言うか?

 彼女と会う前よりも自分の脳を支配している気がする。
『どうやってふたりを引き離そうか』という言葉が。

 ――考える理由は本当に琉生のためだけなのか?