天宮くんはお兄さんを指さしながら言った。

「清香ちゃん、俺の兄貴。名前は(そう)。天宮想、あ・ま・み・や・そ・う! 覚えた?」

 名前を覚えるのが苦手なイメージを持たれたからか、天宮くんがお兄さんの名前を何回も連呼して紹介した。

「想、さん」

 顔立ちは弟の天宮くんと似ていて、彼をそのまま大人にした感じ。髪の毛は軽いウェーブがかかり、前髪を中心で分けている。

 ――想さん、会ったことある気がする。

 すごく懐かしい感覚になったのと同時に、耳鳴りがして、頭が割れるように痛くなった。
 こめかみ部分を押しながら、その場でしゃがみこむ。

 一瞬真っ暗になり、何も見えなくなった。

 徐々に光が戻ってきて頭の中に、洋風な景色が浮かび上がってくる。そして洋風なファッションをした想さんが鮮明に浮かび上がってきた。今私の目の前にいる想さんと顔は違うけれど、はっきりと彼だと分かる。頭の中にいる想さんは笑顔でこっちを見ている。

「清香ちゃん、大丈夫?」

 天宮くんの声でふと我に返る。

「うん、大丈夫。ちょっと立ちくらみしちゃって……」

 表情をひとつも変えず冷たい感じでリアルな想さんはこっちを見ていた。