寮から出てすぐの場所で君はうずくまっていた。コートを着せると一緒にしゃがんだ。

 そっと頭を撫でる。

「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
そう、明らかに大丈夫じゃなさそうな時も、はにかんだ笑顔で君はそう言うんだ。

 見た目が可愛いから、クラスの不良のヤツらに絡まれたりもして。その時は俺が助けたけど。「大丈夫?」って聞いたら震えながら「大丈夫だよ」って答えてたんだ。

「大丈夫?」
「うん、本当に大丈夫だよ」

「本当のこと教えてほしい」
 顔を俺に見せないようにしてうつむく君。 
無理やり顔を覗き込んだら君の瞳が潤ってきた。

「大丈夫?」
「……本当は、だいじょばない。嫉妬で狂いそう」

 初めて見せてくれた君の本音。

「俺も、逆の立場だったらもう狂いすぎると思う」

「えっ?」
君は顔をあげた。
「ごめん、嘘ついたんだ。彼女なんて出来る気配もないし、いらない」
「……」
「俺がほしいのは、お前だけ。ってかめちゃくちゃ震えてるじゃん」

 思い切り抱きしめたくなってキツく抱きしめた。それから耳元で呟いた。

「付き合ってくれる?」

 君はこくんと頷いた。

「これからはだいじょばないことは何でも言って?」

 君はもう一度、頷いた。そして君は耳元で「ふふっ。もう大丈夫だよ」と呟く。明るい声で。抱きしめながら君の幸せそうな笑顔を想像した。

 雪のようなふわりとした気持ちになった。