週末、彼とお花見をすることになった。
 ちょうどお昼頃、待ち合わせ。

 午前中は曇り空だったけれど、晴れてきた。

 彼が選んでくれた場所は広くて、綺麗な桜も沢山咲いている公園なのに、お花見をしているのは数組の家族だけ。

「この公園、こんなに桜綺麗に咲いてるのに人少ないね」
「でしょ? 穴場スポットなんだ」

 静かで、とても過ごしやすそう。

 私は軽くつまめる野菜やからあげ、小さなおにぎりとか、そして彼は日本酒を持ってきた。彼、日本酒が大好きらしい。

 彼は持ってきた黄緑色のレジャーシートをふわりと広げた。ふたりでそこに座ると、すぐに懐かしい思い出話に花が咲いた。

 一緒にいると当時の空気感がそのまま。
 あの頃の気持ちに戻っていく。

 お酒の力もあったのか分からないけれど、気持ちが盛り上がり、なんでも質問出来る気がして「彼女いるの?」と、単刀直入に訊いてみた。

「いないよ」

 その四文字が私の心をほっとさせた。
 何故私は今、ほっとしたのだろう。

「そうなんだ、私もいないよ」

「でも、今お見合いさせられそうなんだ」

 眉を八の字にさせて彼は言う。

 心がずしんと重たくなった。
 何故私は今、心が重たくなったのだろう。