結城先生の初恋~隣の席の君❀.*゚

 高校二年生になった。

 再び彼と同じクラスになり、席も隣だった。当時は5クラスあり、各クラス30人ちょっとぐらいの人数だった気がする。その中で再び隣の席になるのはなかなか低い確率だと思う。

 話をするのは相変わらず必要最低限なことだけ。だと思っていたのに……。

 学校の帰り道、桜の木をぼんやり眺めていると、小さな鳥を見つけた。鳥は雀やカラス、鶏とかその辺しか分からない。

 でもこの鳥の名前、知ってる気がする。
 
「この鳥の名前、なんだっけなぁ」

 答えは見つかっても見つからなくても、どっちでもいいかな?なんて思いながら呟いたら、後ろから「ヒヨドリだよ」って声がした。

 いきなり近くで声がして全身が一瞬震えた。振り向くと、彼、絢人くんがいた。

「この子は桜の花の蜜を吸っていてね……」

 彼はしばらく『ヒヨドリ』について説明をしてくれたけれど、詳しい内容はあんまり興味がなくて覚えてない。

「鳥に興味あるの? 好き?」ってきらきらした眼差しで質問してきたから「うん。可愛いよね! 好き」って答えた。

 初めて学校のこと以外で彼と会話をした。
 次の日、いつものように彼の隣の席に座ると彼は野鳥図鑑を見せてきた。

「よかったらこれ貸すよ? 僕、それ全部暗記してるし、返すのはいつでもいいから」

 こんな分厚い図鑑、全部暗記してるの?
 すごい!!
 
 特に断る理由がなかったから借りた。
 それから彼と話すようになった。

 彼は植物にも詳しくて、興味あるふりをすると学校が休みの日には、珍しい植物がある場所にも連れていってくれた。

 興味があるふりをしていたけれど、いつの間にか本当に興味が出てきて。それは多分『彼が好きなもの』だからなのだと思った。