4月7日。
 今日は高校の入学式。

 私は今、大きな白い建物の前に立っている。
 ここは、私立姫立(きりつ)学園。
 今日から私、二條沙良(にじょうさら)が通う学園だ。寮生活も始まる。

 
「次、お嬢様に会えるのはゴールデンウィークでしょうかね?」
「うん、そうだね。岩山さん、会えない時も元気でね!」
「お嬢様も、お元気で」

 今話をしているのは、小さい頃から私を守ってくれていたお姉さん的な存在の岩山さん。彼女が運転した車でここまで来た。

 今日も忙しい両親の代わりに入学式に出席してくれる。

「岩山さん、私の制服乱れてない?」
「大丈夫ですよ。お嬢様、制服がとてもお似合いですね」

 岩山さんは指で軽くブラウスの襟を整えてくれた。
 
 私は、改めて自分の制服を見つめた。
 ここの学園では、身に纏う物の色がクラスによって違う。

 私は1年2組で色は赤。今日から純白のブラウスに赤のスカートやリボンなどを纏うことになる。好きな色だから、この色だと知った時は気分が良かった。

 その色は女子だけで、男子の制服とかの色は漆黒。ちなみにクラスの女子は私ひとり。
 
 この学園では『姫は騎士に守ってもらう』という独特な規則がある。

 クラスでひとりしかいない女子の私は必然的に姫に。そして、20人いる同じクラスの男子の中から騎士をひとり選んで、守って貰うことに。

 そして今日から1ヶ月後、全校生徒が集まり、姫達と選ばれた騎士達が舞台に立ち、騎士の誓いの儀式が行われる。

 私たちは1期生だから、前例もないし、先輩もいない。

 だからどんな感じだったのかなんて質問出来ないし、これからどうなるのかも予想が出来ない。

 色々な気持ちが心の中で交差する。

「私、がんばるから!」 
「はい、お嬢様。応援してます!」

 私は背筋を伸ばし学園を見つめた。