二條が誘拐未遂にあった日の3日前。

 男子寮はふたりずつの部屋で、隣の部屋には根本たちがいた。

 数日前からヤツの部屋で数人集まりコソコソしていたのは知っていた。

 ちょうど寮の自動販売機で飲み物を買い、部屋に戻ろうとした時だった。根本の部屋から出てきた3人の会話が耳に入ってきた。


「『姫は俺のこと好きになるから俺を騎士に選ぶ』とか根本、自信満々に言ってたな」
「なっ、すごい自信だったな」
「でも、誘拐って、大胆」
「ほんとに。まぁ、俺ら騎士に選ばれる気配ねーし、根本の家金持ちだからアイツと繋がってたら得しそうだし、協力したら金貰えるからなんでもするけどな」

 誰が騎士になるとか、全く興味はなかった。自分はただ家から近いって理由でこの学校を選んだし、騎士になれば色々自由もなくなって、めんどくさそうだなって考えていた。

 でもこの会話の中に“誘拐”って言葉があって、気になっていた。