なんとか追いつかれずに学園の敷地内に戻ってきた。
 校庭で走っている生徒たちが目に入る。

「とりあえず人も沢山いるし、ここまで追いかけてきて襲ってくることはないと思う」

 成瀬くんがそう言い、私の手を離した。ふたりの進む速度は落ち、ゆっくり歩く。

「はぁ、疲れた」

 玄関に入り私は座った。中に入っても成瀬くんは立ったまま。周りをまだ警戒している様子。

「それにしても、偶然先生がいないこのタイミングで……」
 私は外の生徒たちを眺めながら言う。
「偶然じゃない……」
「えっ?」
 彼を見ると目が合う。
「だって、根本……」

「あ、いた! 二條さん!」
 話の途中で若槻先生が玄関に来た。
「二條さん、外にいたの? 寮にいるのかな?って思って覗いて見たけどいなかったからちょっと心配したわ」

 あれ? 確か、外に出るの先生に言ってきてあげるって根本くんが……。

「根本くんから何も聞いてなかったですか?」
「ん? 根本くん? 何も聞いてないけど……」

 私は成瀬くんと再び目を合わせた。

 それから、今起こった誘拐未遂事件を先生に話した。
 先生の顔は青ざめていた。

「私がきちんと代わりに二條さんを守る人、見つけていれば……怖い思いさせてごめんなさい」

「いえ、私が勝手に外へ行ったのが悪いんです」

 そう、さっき根本くんに誘われた時にはっきり断れば良かったんだ。

 自分の行動のせいで、こんなに心配させてしまって……。ずしんと気持ちが重たくなる。