さくらは、死神からイケメン男子高校生という認識に変わった真一に、少し緊張しながらも、さくらから沈黙を破った。
さくらは、ひざの上で組んだ両手の親指をくるくると動かしながら、勇気を出して真一に話しかけた。
「あの・・・、私って生き返ったってことで合ってる?」
「・・・おそらく。」
そこからさくらは聞きたいことが次々と口から溢れる。
「まさか真一が同じ学校の生徒だったなんて・・・。死神じゃなかったの?」
「俺は死神だなんて一言も言ってないよ。」
「じゃあ、なんで黒ずくめだったの?あんな格好してたらどこからどう見ても死神でしょ?」
「俺もよく分からないよ。多分ミカエルの趣味だと思う。」
「ミカエル様とはどういう関係?」
「関係?俺も2回しか会ってないからなあ。とりあえずミカエルから力を貸してもらってた感じ。」
「だからなんかよく分からないけどめちゃめちゃ強かったのね。」
「まあ、あれにはあれで事情があって・・・。話すと長くなりそうだから、また今度。」
「じゃあ結局、私って、ゲームに勝ったってことでいいのかな?」
「おそらく・・・。俺も勝ったってことだよな。」
「え?勝ったのは私でしょ?」
「あっ、いや、こっちの話。」
「でも、まさか目撃証言してくれたのが真一だったとは・・・。てっきり真一は死神だとずっと思ってたから。
真一、私の後ろにいたんだね。私、自分が見えてた範囲で目撃者を探してたから・・・。
どうりで証言してくれた人が見つからないわけだわ。ははっ。」
と、さくらは力なく笑いながら言った。
真一は優しいトーンで、
「それにしても、あれだけ一緒にいたから、もっと早くありがとうって言葉、さくらから聞けると思ってたん
だけどな。まさかあんなギリギリになるとはね。」
と、少し笑いながら言った。
「いや、ほんとにそのことに関しては本当にごめんなさい。」
と、さくらは頭を軽く下げて真一に謝った。
さくらは、あんなに一緒いて、何回も真一に助けてもらっていたにもかかわらず、真一に対して、
ありがとうと一言も言っていなかった自分に、さくら自身もびっくりしていた。
しかし、あの時のさくらは、本当に真一のことを死神だと信じて疑っていなかった。
でもそのおかげで、イケメン男子に死神というフィルターがかかり、さくらの人見知り光線が発動せず、
さくらは真一と最初から普通に話をすることが出来ていたのだ。今思うと、死神フィルターに感謝だ。
しかし、今はそのフィルターが外れ、新たにイケメン高校生というフィルターがかかった真一に、さくらはどう接すればいいか
正直なところ戸惑いもあった。
真一は、優しい眼差しで、
「いや、でもさくらと長く一緒にいられて俺的には楽しかったよ。」
と言った。
さくらの顔が、ぽっと赤くなった。
「え?それって・・・」
と、さくらが言いかけたところで、
ガラララ
と保健室の扉が開き、保健の先生が、
「二人ともお待たせ。さあ行きましょう。」
と言った。
二人はゆっくりと立ち上がり、廊下に出ると、保健の先生の後ろを少し距離をあけながら歩き出した。
さくらは前を歩く保健の先生の後ろ姿を見ながら歩く。
真一も、さくらの歩幅に合わせて、さくらの横を歩いていく。
そのさくらの視界の端に、小さい黒い煙が見えた気がした。
さくらは、はっとし、黒い煙が見えた場所を、目を凝らして、もう一度よく見てみた。
何もない。
ほっとしながらも、
『まさかね・・・。』
さくらは、きっと気のせいだと思いながら、真一の方を見ると、
真一も、さくらが黒い煙をみつけた辺りを見ていた。
『まさか真一も見たの?』
さくらがそう思った瞬間、さくらと真一の目がばちっと合った。
真一がさくらに小声で言う。
「見た?」
さくらも小声で返事をした。
「うん。」
二人は揃ってふふっと吹き出し小さく笑った。
それから背の高い真一が少し前屈みになり、さくらの耳元に小声で、
「とりあえず、あとで連絡先。」
と、前を歩く保健の先生に聞こえないように、こそっと言った。
さくらは耳を真っ赤にしながら、小さく頷いた。
